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父の被爆体験「語り継ぐ」 南方特別留学生だったブルネイ元首相の長女 核の脅威に思い強める

 広島で被爆した元南方特別留学生で、ブルネイ元首相のペンギラン・ユソフ氏(2016年に94歳で死去)の遺族が、体験継承への思いを強めている。2月、広島県内の企業でつくる広島アセアン協会の視察団に同行してブルネイを訪れ、長女のペンギラン・ダティン・ユラ・アライティ・ユスフさん(65)にインタビューした。(石井雄一)

 「私が子どもの頃、父はたびたび広島での体験について語っていました。そして父が日本のことを語る時、いつも感情がこもっていました」。首都バンダルスリブガワンで取材に応じたアライティさんは語った。

 元首相は1944年に来日し、45年に広島文理科大(現広島大)に進学した。8月6日、爆心地から約1・5キロにある教室で、授業中に被爆。直後から日本人の救護に当たった。「あの瞬間、パッと光が広がった。外に出ると、焼けただれ、泣き叫ぶ人がいた。そうした光景が心と頭に焼きついて書き表すことも難しい、と父は語っていました」

 67~72年、英国保護領だったブルネイで首相を務め、2001~02年には駐日大使を務めた。広島大は13年に、日ブルネイ友好や平和活動への功績をたたえ、名誉博士号を授与している。

 なおも核の脅威が拭い去れない世界。アライティさんは「父は、孫やひ孫にも、ヒロシマの体験を語っていた。家族として継承していくことが大切だと感じています」と語る。

 夫も05~08年に駐日大使を務めており、自身も日本の友人は多い。「今後、さまざまな活動を通じ、ブルネイと広島の友好関係を次世代につないでいきたいと思っています」

(2019年3月11日朝刊掲載)

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