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原発事故 癒えない傷 土井敏邦監督の新作「福島は語る」

 経団連の中西宏明会長が、原発政策を巡って「エモーショナル(感情的)な反対をする人たちと議論をしても意味がない」と語ったという。土井敏邦監督の新作ドキュメンタリー映画「福島は語る」は、福島第1原発事故で人生を狂わされた人々の肉声を通じ、その「感情」の根拠を突き付ける。

 土井監督が4年がかりで取材、編集。慣れ親しんだ故郷を追われ、誇りを持って営んできた生業を失い、愛する家族と悲痛な別れを強いられ…。癒えない傷を抱えた14人の語りが胸に迫る。

 福島県郡山市で14代続く農家の中村和夫さんは、手間を惜しまず最高の品質と自負する米が、原発事故後、「同情」で買ってはもらえても「安心」して買ってはもらえない事態に直面する。「福島だけで終わらせてほしい」「日本から原発をなくすのが復興だ」。映画に刻まれた声は、2017年に68歳で急死した中村さんの遺言となった。

 「フクシマは終わったこと、なかったことにされてたまるか。そんな思いで制作した」と土井監督。広島市西区の横川シネマで21日まで、午前10時10分から上映されている。(道面雅量)

(2019年3月16日朝刊掲載)

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