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改正援護法施行3ヵ月 被爆手帳の在外申請低調

■記者 森田裕美

 海外からの被爆者健康手帳の申請を可能にした改正被爆者援護法が15日、施行3カ月となった。審査を担当する広島、長崎4県市への新規申請は、事前の推計件数の1割にも満たない13件。居住地からの申請に道が開けても、被爆の事実を証明する手だてがない在外被爆者の現状が浮き彫りになっている。

 改正援護法を受け、在外被爆者が、居住地の日本大使館や領事館に提出した手帳の申請書類は、被爆場所に応じて4県市のいずれかに届く。広島市は、在外被爆者団体などへの事前照会に基づき4県市への新規申請を155件と推計した。しかし実際に韓国や北米、南米からあった申請は計13件にとどまり、うち11件を広島市が受け付けた。

 一方、既に被爆の事実が確認され、来日すれば手帳に交換できる「被爆確認証」を所持していた海外在住者からの申請は26件。4県市への推定数の約8割になっている。うち広島市に届いたのは22件。

 新規申請が少ない背景には1957年の国の通知がある。原則として被爆を証明する書類や2人以上の証人を必要とするのだ。韓国や米国、ブラジルの被爆者団体は以前から「法改正が遅すぎ、証人捜しは困難」と指摘していた。

 北米被爆者協会役員森中照子さん(77)は「渡米からの時間が経過し証人が見つからない。広い国では車がないと領事館にも行けない」と話す。米国生まれの家族の協力が得られず取得をあきらめる会員も多いという。

 韓国の原爆被害者を救援する市民の会の豊永恵三郎・広島支部長(72)は「渡日が難しく、長年申請できずにいた被爆者に従前通りの規定を求めるのは無理。審査方針の緩和を」と訴えている。

<在外公館を通じた広島市への被爆者健康手帳申請件数>
               韓国    米国    カナダ   ブラジル   計
新規申請者         8        2      0       1    11
被爆確認証所持者    16       4       2       0     22
合計             24      6       2       1     33

海外からの被爆者健康手帳申請
 2008年12月15日の改正被爆者援護法の施行前は、在外被爆者は来日しなければ被爆者健康手帳を申請できなかった。いったん手帳を取得すれば健康管理手当など各種手当を居住国・地域の日本の在外公館で申請、受給できる。原爆症の認定は現在も来日しなければ申請できない。

(2009年3月15日朝刊掲載)

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