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福竜丸展示館 発信強化 来月新装オープン 証言映像など新設

 東京都江東区夢の島公園にある都立第五福竜丸展示館が4月2日、9カ月ぶりに新装オープンする。1954年に米国の水爆実験で被曝(ひばく)したマグロ漁船を保存している施設を改修し、元乗組員の証言映像の視聴コーナーなどを新設。核被害の悲惨さを伝える展示を充実させた。

 静岡県焼津市の第五福竜丸(全長約30メートル)が太平洋・ビキニ環礁での実験によって被曝してから22年後の76年、都内に放置されていた船体を保存するため、展示館はオープンした。近年は雨漏りや地盤沈下による床のたわみが目立ち、船体への影響が心配されていた。都は屋根、床の張り替えや照明改良の費用約2億円を予算化し、昨年7月から休館してリニューアルを進めてきた。

 証言映像では元乗組員23人のうち冷凍士だった大石又七さん(85)=東京都大田区=が、実験の瞬間や死の恐怖を抱えた日々を振り返る。今年2月に元操舵(そうだ)手見崎進さんが92歳で亡くなり、生存者は大石さんを含め4人となった。映像は記憶を語り継ぐため、展示館としては初めて製作した。

 普段入れない船内を約8分間で紹介する3D映像も初公開。特殊なカメラで撮影した無線通信室、魚の保管庫なども見られる。外国人向けに説明パネルの英文を詳しくし、英語版のリーフレットも作った。

 展示館の安田和也主任学芸員(66)は「大事な船の保存にふさわしい環境となった。核の引き起こす惨事について発信を強めたい」と話す。午前9時半~午後4時。月曜休館。無料。☎03(3521)8494。(田中美千子)

(2019年3月23日朝刊掲載)

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