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騒音 山口県が検証へ 岩国 艦載機移転完了1年 知事 国に対策要請方針

 米軍岩国基地(岩国市)に空母艦載機が移転を完了してから30日で1年となる。市には騒音の苦情が相次いでいるが、山口県は移転後に騒音が悪化したのか判断していない。艦載機の滞在時はうるさいが、洋上への展開時には軽減するためだ。県は滑走路の沖合移設前より生活環境が悪くならないことを受け入れ条件としていた。村岡嗣政知事は22日、来月中旬にも1年間の騒音状況を検証し、国に対策を求める考えを示した。(和多正憲)

 艦載機は米海軍の空母ロナルド・レーガンに搭載され長期航海に同行する。このため空母が母港の横須賀基地(神奈川県横須賀市)を離れている間は、岩国基地周辺の「うるささ指数(W値)」や騒音回数は大幅に減少。空母の帰還時に再び増加する傾向がある。

 さらに出港前にはパイロットの技量維持のため、地上の滑走路を甲板に見立てて離着陸を繰り返す陸上空母離着陸訓練(FCLP)や着艦資格取得訓練(CQ)がある。いずれも岩国基地では実施されていないが、訓練に向かう艦載機が昼夜行き来するため、基地周辺の騒音は悪化する。

出航前はW値増

 実際、艦載機の移転完了後、空母出航前の昨年4、5月には山口、広島両県の基地周辺の地域で騒音は著しく悪化。国や山口県などが設置した騒音測定器の計24地点のうち、同4、5月(月間平均)と沖合移設前の2009年度(年間平均)を比べると、過半数の13地点でW値が上回った。

 一方、空母が長期航海に出た同8月には一転、8割の19地点で減少。空母が帰還した同11月以降は再び増加した。岩国基地には米海兵隊機や海上自衛隊機も配備されているが、米海軍の艦載機の運用状況で騒音は大きく変化している。

 国は、騒音対策として約1キロ沖合に滑走路を移し、10年5月から運用を始めた経緯がある。県はこの沖合移設前より悪化しないことを艦載機受け入れの判断基準とした。艦載機移転で恒常的に騒音が増えれば、前提条件は崩れかねない。

「運用など影響」

 県岩国基地対策室は「騒音状況は艦載機の滞在や運用が大きく影響する。一定期間の検証が必要だ」とする。3月末までの年間の騒音の平均値と沖合移設前の数値などを比較し、現状を判断するという。

 村岡知事は22日の記者会見で「4月中旬に騒音測定地点の1年間の状況を検証したい。結果を踏まえ国に必要な対応を求める」と述べた。

米空母艦載機移転計画
 在日米軍再編の一環で日米両政府が2006年5月に合意。米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地(岩国市)へ空母艦載機約60機を移す計画で、山口県と岩国市などが17年6月に移転受け入れを表明した。18年3月30日の移転完了を受け、同基地の所属機は約120機に倍増し、極東最大級の航空基地となった。

(2019年3月23日朝刊掲載)

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