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東日本大震災2年 変化続く中国地方の経済活動

 東日本大震災から11日で2年となる。中国地方では、企業が原発から離れ、災害の被害が少ない地域へ進出したり、生産を移したりする動きが続く。工場やスーパーでは節電の取り組みが定着。建設業が受注を伸ばすなど復興需要も本格化している。(山瀬隆弘、和田木健史、山田英和)

リスク分散

高い安全性求め流入

データセンターや食品

 災害が少ないとされる中国地方に、データセンターなどの進出が続く。膨大な企業や顧客情報を預かり、高い安全性が求められるからだ。

 日立製作所(東京)は昨年11月、岡山市北区にデータセンターを増設した。「災害時の事業継続への意識が、取引先に高まっている」と同社。震災や風水害の恐れが小さいとして、同社で西日本最大の拠点に拡充した。

 「地震リスクが極めて低い」として松江市のデータセンターの規模を2倍にするのは、IT大手インターネットイニシアティブ(同)。「災害リスクの小さい環境でのサービス提供」を重視する。4月に着工する。

 鳥取市には、JCB(同)がカード決済処理のセンターを設け、4月にも一部業務を開始。東京と2センター体制にして、いずれかが被災しても業務を続けられるようにする。鳥取県によると本年度、災害リスク分散を図る企業進出が4件あり、計680人の雇用創出が見込まれる。

 原発事故の影響を受けた動きも広がった。電子部品製造や人材派遣のプロス(福島県いわき市)は、キクラゲの生産子会社を鳥取市に設立。昨年5月に事業を始めた。当初は福島県で展開する計画だったが風評被害の問題で頓挫。「原発から離れ、リスクのない場所を選んだ」とする。

 山陰合同銀行(松江市)は、中国電力島根原発(同)の事故で本店が使えない事態に備え、米子支店(米子市)を同原発から32キロ離れた場所に移す。原子力防災体制の検討が進む中、島根原発の周辺では、事業所の防災コストが高まる可能性がある。

 本社が被災し機能を失った場合への備えも進む。三菱レイヨンは大竹事業所(大竹市)、三菱化学は水島事業所(倉敷市)を、それぞれ東京本社の機能が失われた場合の機能移管先に設定した。

 戸田工業(大竹市)も、本社工場が被災した場合、本社機能を東京オフィスに移し、韓国や中国の子会社で代替生産する。

節電

工場・スーパー 定着

夜間操業やLED設置

 中国電力によると、1月の販売電力量は55億6200万キロワット時で、震災前の2011年1月を4・3%下回った。同年3月からことし1月までの23カ月間のうち16カ月が前年割れ。中電は「企業や家庭に節電の取り組みが定着した」とみる。

 医療器具製造のJMS(広島市中区)は震災後、工場の節電を強化。出雲工場(出雲市)は、ベルトコンベヤーの稼働時間を減らすなどして2年で電力使用量を5%下げた。更衣室などには人の動きを感知するセンサーを付け、無駄な照明を控える。

 鋳物部品など製造の大和重工(安佐北区)は昨年夏、鉄を溶かす電気炉の稼働を夜間や早朝に集中させ、午後1~4時のピーク電力をカット。7~9月で約3千万円の経費を削減した。

 この取り組みには、従業員の深夜勤務が増える課題がある。桑田豊幸取締役は「節電が必要との認識を従業員と共有して取り組んだ。この夏も続けたい」と考える。

 中国経済産業局の昨年8月の調査によると、中国地方の386の企業・団体の節電策で最も多かったのは「高効率照明の設置」。4割弱に上った。

 スーパーのフレスタ(西区)は昨年1月、店舗の蛍光灯を消費電力の小さな発光ダイオード(LED)に切り替え始めた。蛍光灯より費用は5割増えるが、電気代が減り、長く使えるためカバーできると判断した。全54店に展開する方針だ。

 補助灯の電球もLEDに交換し、数を半減させた。経営品質本部の石田和弘開発グループ長は「店内は少し暗くなるが、苦情は聞かない」としている。

復興需要

住宅・建設関連伸びる

人手不足や資材高悩み

 製材大手の中国木材(呉市)は、昨年春ごろから東北地方向けの住宅用木材の売り上げが前年を上回り、ことし2月は4割程度の増加となった。「住宅は全国で好調だが、他地域よりも約1割多い」という。

 仙台市に建設子会社がある橋工事などのビーアールホールディングス(広島市東区)は、2012年4~12月期の建設事業の受注高が前年同期を2割超上回り、過去5年で最高となった。ショベルカー製造のコベルコ建機(佐伯区)は、景気回復への期待から設備投資を再開する企業の動きを受けて、五日市工場(同)のフル稼働が続く。

 一方で人手不足や資材高騰の影響も大きくなり始めた。建材メーカーのウッドワン(廿日市市)は東北の工務店への建材販売が伸びているものの、「資材高騰と職人不足で昨年12月以降、住宅着工の動きが鈍くなり始めた」とみる。ビーアールホールディングスも「現地の協力会社が人材の確保に苦労している」という。

 復興の長期化を見据え広島銀行(中区)は、今月末までとしていた特別融資の期限を延長する方針。取引先や自社の事業所が被災して売り上げが減った企業や、復興に関する事業をする企業が対象。これまでに168件、35億3200万円を融資した。

(2013年3月9日朝刊掲載)

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