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語り継ぐ「回天」の記憶 周南市が記念誌

 周南市は、多くの若者の命が奪われた旧日本海軍の特攻兵器「回天」の歴史を伝える記念誌「回天記念館と人間魚雷『回天』」を刊行した。当時の証言者が少なくなる中、悲劇を後世に伝えようと、市が初めてまとめた一冊。学校などでの平和学習に活用する。

 A4判70ページ。訓練基地があった大津島の回天記念館が昨年11月に開館50年を迎えたのを機に作成した。回天が開発された経緯や構造を解説し、太平洋戦争の末期に島から出撃した搭乗員の名簿や写真を載せる。訓練基地の遺構も紹介し、島内の当時の様子を伝える。

 初めて出撃した「菊水隊」のページでは搭乗員に選抜された若者が壮行会を経て送り出される過程を詳しく説明。戦果は大々的に報じられ特攻作戦の継続につながったが、「米軍側で確認されている被害数とは大きな違い」があると国民向けに誇張された大本営発表の偽りを指摘する。

 800部印刷。市内の小中学校や図書館に配るほか、同館でも1部千円で販売する。同館の三崎英和さん(63)は「回天の記憶を正確に後世へ伝え、戦争で亡くなった搭乗員の思いを想像してもらいたい」と話している。(川上裕)

(2019年3月27日朝刊掲載)

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