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福竜丸の乗組員2人カルテ現存 東京大病院 被曝後に入院

 1954年3月に米国の水爆実験で被曝(ひばく)した静岡県焼津市のマグロ漁船第五福竜丸の乗組員23人のうち2人のカルテが、東京大病院(東京都文京区)に現存することが分かった。都内の元区議からの情報公開請求を受け、同病院が調査して存在に気付いたという。

 カルテは、被曝直後から翌55年5月まで同病院に入院した7人のうち2人分。東京大は個人情報であることを理由に非開示とした。

 同病院によると、一般患者のカルテと共に冊子化され、血管外科が保管していた。体温や白血球数の推移などのデータが記されているという。残る5人分は破棄された可能性が高いという。

 第五福竜丸は、マーシャル諸島ビキニ環礁での実験で被曝した。東京大病院以外の乗組員16人は、国立東京第一病院(現国立国際医療研究センター、新宿区)に入院。このカルテのコピーは退院後の診療を引き継いだ放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)に保管されている。

 ことし2月、元新宿区議長谷川順一さん(82)=世田谷区=が東京大病院にカルテの開示を請求した。同病院に入院していた7人は既に亡くなり、乗組員のうち存命は4人となった。

 被曝した船体を保管する第五福竜丸展示館(江東区)は「カルテは貴重な闘病の記録。被曝による人体への影響を検証するのに生かせる可能性もあり、永久保存すべきだ」と指摘。病院側は東京大文書館(文京区)への移管を検討しているという。(田中美千子)

(2019年3月28日朝刊掲載)

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