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被爆前の広島映像公開 34年ごろ 原爆資料館HP 市民の日常を記録

八丁堀/路面電車/ポンポン船…

 原爆資料館(広島市中区)は、1934年ごろの市中心部や郊外の海水浴場などの様子を収めたフィルムの映像をデジタル化し、ホームページ(HP)での公開を始めた。撮影者の井上秀夫さん(故人)の遺族が2017年に寄贈した。同館は「戦前の広島の様子を記録した貴重な映像」として、29日に同館で始まる新着資料展でも放映する。(明知隼二)

 映像は9・5ミリフィルム2本で計約7分間。八丁堀の町並み、相生橋を行き交う路面電車、蒸気を出して進むポンポン船が本川を行く風景のほか、家族で訪れた五日市町(現佐伯区)の海水浴場のにぎわいも撮影している。陸軍の行列が馬で野戦砲のようなものを運ぶ様子の映像もあり、軍都としての一面も記録する。

 映像に写る井上さんの長男節夫さん(15年に85歳で死去)が長年、家族の思い出の品として残していた。妻和子さん(87)=兵庫県西宮市=が引き継いだが、17年に同館が別の記録映像を所蔵、公開していることを報道で知り、寄贈を決めた。「被爆前の広島の映像は貴重と聞き、他にも見たい人がいるのではないかと思った。当時の様子を知るために役立ててほしい」と話している。

 同館が所蔵する戦前の広島の記録映像のうち、フィルムの原本を所蔵していたのはこれまで、1963年に寄贈を受けた1本(約3分)のみ。今回の2本を含めてデジタル化し、同館HP「平和データベース」の動画コーナーで公開している。同館学芸課は「週末に郊外で海水浴を楽しむなど、当時の市民の日常が記録されている。原爆で失われたものの大きさも、あらためて感じられる」としている。

(2019年3月29日朝刊掲載)

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