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オスプレイ本土訓練 米軍「地元に配慮」し初回終了 合意骨抜きの恐れも

 岩国市の米海兵隊岩国基地を拠点とした垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの本土初訓練が8日、終わった。3日間の訓練では、四国を中心とした「オレンジルート」での昼間の飛行と、1時間半程度の夜間飛行が確認されただけだった。

 特に山口県内の公立高校入試が実施された7日は、日中にオスプレイが飛行する姿はなかった。昨夏の試験飛行に比べても飛行回数は少なく、県、市職員らの目視では問題ある飛行も確認されなかった。米軍は「(県教委の)要請に配慮した」とし、地元の反発を招くような強行的な訓練は避けたとみられる。

 だが、安心してもいられない。配備先の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)周辺では7日までに少なくとも507回の飛行があり、県のまとめで昨年10、11の両月だけで318件の合意違反飛行が確認された。多くが市街地上空での垂直離着陸モードや学校上空の飛行の目撃情報だ。本土での訓練の既成事実を積み上げた後で、岩国でも違反行為が恒常化する恐れがある。

 山口大の纐纈(こうけつ)厚副学長(62)=現代日本政治軍事論=は「合意事項は必ず無視される」と指摘する。日中150メートル以上、夜間300メートル以上の高度やルートを守る飛行では軍事的な訓練の効果は低いとみられるからだ。

 今後、本土で行われる見通しの訓練は、米軍の環境審査報告書に記述のない中国山地を東西に貫く「ブラウンルート」での低空飛行も予想される。纐纈副学長は「中国へのけん制の意味合いもあり、岩国を拠点に西日本は濃密な訓練地になる」と警告する。(堀晋也)

岩国市民「情報不足」の声 必要性へ一定の理解も

 岩国市の米海兵隊岩国基地を拠点に初の本土訓練を行ったオスプレイ3機は、夜間飛行を含む3日間の日程を終えて8日、配備先の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)へ戻った。岩国市民からは事故の不安だけでなく、訓練に一定の理解を示す声も。情報の少なさを指摘する意見が目立った。

 岩国YMCA国際医療福祉専門学校1年で、同市砂山町の松原由衣さん(19)は「墜落しないかと不安。江津市に実家があり、今後、中国地方で飛行を繰り返さないか心配」とため息をつく。

 JR岩国駅前で衣料品店を営む八百屋博さん(71)は「訓練の前に、誰もが納得できる形で安全性を説明するべきだ」と訴える。

 一方、同市麻里布町の自営業末田浩英さん(54)は「(国防の観点からみて)国が米軍を受け入れている以上、訓練は必要。古いヘリコプターを復活させるわけにはいかない」。

 同市多田の主婦天田直美さん(37)も「防衛上必要性があるのなら訓練は当たり前」。ただ「米国での訓練はどうなのか。日本だけに押しつけられているのならおかしい」とも話した。

 岩国基地そばのあさひ保育園の保育士佐川智恵子さん(49)は「この辺りを低く飛ぶ時間などが分かるなら、園児を連れてのお散歩を控えるなどの対応もできる」と話した。

 住民への情報提供不足について、福田良彦市長は「日程を連絡してきたことは評価できる。今後も情報提供を求めていく」。山本繁太郎知事は「決して十分ではないという認識だが、ルール(日米合意)に逸脱する行為がなかったことは良かった」とした。

(2013年3月9日朝刊掲載)

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