核軍縮 20ヵ国評価下げる 「ひろしまレポート」18年採点 禁止条約 乏しい進展
19年4月5日
広島県は4日、核兵器を巡る世界36カ国の2018年の取り組みを3分野で採点した「ひろしまレポート」を公表した。核軍縮の分野では、17年から評価項目に追加した核兵器禁止条約への署名や批准を巡る動きの乏しさなどから、全体の55・6%に当たる20カ国が評価を下げた。北朝鮮は18年6月に史上初めて開かれた米国との首脳会談などを踏まえて評価を上げたが、依然として最下位は変わらない。(教蓮孝匡)
取りまとめは県の委託を受けたシンクタンク「日本国際問題研究所」(東京)が担った。戸崎洋史主任研究員(核問題)は県庁での記者会見で「核軍縮は停滞、あるいは逆行していると言える。米国の核体制の見直しなどで世界の安全保障環境が非常に厳しくなっている中で、核兵器の抑止力などへの再評価が進んでいる」と総括した。
36カ国の内訳は、核拡散防止条約(NPT)で認められた核兵器保有5大国、事実上保有する4カ国、非保有国の27カ国となる。研究所が18年の動きを基に、核軍縮▽核不拡散▽核物質の安全管理―の計65項目で採点。満点と比べてどのくらいの割合かを示す「評点率」で評価した。
核軍縮の採点は32項目。北朝鮮は「重要な政策の発表、活動の実施」「核軍縮に関する国連総会決議への投票行動」など4項目で評価を上げ、評点率は6・2ポイント改善してマイナス2・0%だった。核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中止決定、米朝首脳会談などが影響した。
核兵器保有の5大国と事実上保有する核保有4カ国のうち、北朝鮮と英国を除く7カ国が評価を下げた。保有する核兵器の近代化・強化の動きが進んでいる点などが下落につながった。
米国は米朝首脳会談などを受けて2項目で上昇し、核兵器近代化の動きが見られるなどとして2項目で低下した。評点率は0・7ポイント減の15・8%。中距離核戦力(INF)廃棄条約を巡り、昨年10月に離脱方針を表明した点については「離脱表明だけでは核軍拡への具体的な動きにつながっているとはいえない」として評価に反映させなかった。
日本の評点率は53・6%で11番目に高い。前年比では2・4ポイント下がった。政府が核兵器の材料となる核物質の製造を禁止する「兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)」の交渉開始に向けて活発に取り組んだ17年と比べて、目立った動きがないのが響いた。
残る2分野のうち、核不拡散では5大国の米国、中国、フランスが評点率を下げた。上昇したのはニュージーランド、フィリピン、カザフスタンの3カ国にとどまった。核物質の安全管理では、米国や中国など11カ国が改善し、英国やロシアなど25カ国は増減なし。悪化した国はなかった。
(2019年4月5日朝刊掲載)
<各国の核兵器廃絶の取り組み評点率>
国名 核軍縮(%) 核不拡散(%) 核物質の安全管理(%)
5大国
英国※215 24.8(0.0) 83.0(0.0) 61.0(0.0)
フランス※300 19.8(▴3.0) 80.9(▴4.2) 63.4(0.0)
米国※6450 15.8(▴0.7) 85.1(▴2.1) 61.0(2.5)
中国※280 7.9(▴2.0) 63.8(▴2.2) 65.9(4.9)
ロシア※6850 5.6(▴2.1) 74.5(0.0) 46.3(0.0)
4カ国
インド 2.0(▴2.1) 34.9(0.0) 56.1(2.4)
※130~140
パキスタン 0.0(▴2.0) 23.3(0.0) 46.3(2.4)
※140~150
イスラエル※80 -2.0(▴2.0) 30.2(0.0) 53.7(0.0)
北朝鮮 ―2.0(6.2) 0.0(0.0) ―4.9(0.0)
※10~20
非保有27カ国
オーストリア 78.6(7.2) 85.2(0.0) 68.3(0.0)
ニュージーランド 76.2(4.8) 93.4(3.2) 68.3(2.4)
メキシコ 69.0(3.5) 82.0(0.0) 80.5(7.3)
ブラジル 63.1(▴1.2) 70.5(0.0) 68.3(0.0)
カザフスタン 61.9(4.8) 80.3(3.3) 68.3(4.9)
フィリピン 60.7(▴3.6) 85.2(3.2) 68.3(4.9)
スウェーデン 59.5(▴2.4) 86.9(0.0) 92.7(0.0)
南アフリカ 59.5(▴1.2) 86.9(0.0) 61.0(0.0)
インドネシア 59.5(0.0) 78.7(0.0) 75.6(2.4)
スイス 59.5(1.2) 82.0(0.0) 78.0(0.0)
日本 53.6(▴2.4) 86.9(0.0) 70.7(0.0)
チリ 52.4(▴10.7) 85.2(0.0) 73.2(0.0)
ナイジェリア 52.4(▴3.6) 73.8(0.0) 73.2(17.1)
アラブ首長国連邦 48.8(▴3.6) 73.8(0.0) 68.3(0.0)
(UAE)
カナダ 45.2(0.0) 85.2(0.0) 80.5(0.0)
オーストラリア 41.7(0.0) 91.8(0.0) 78.0(0.0)
エジプト 38.1(▴4.8) 60.7(0.0) 34.1(0.0)
韓国 35.7(2.4) 83.6(0.0) 90.2(0.0)
ノルウェー 34.5(▴2.4) 88.5(0.0) 68.3(0.0)
ドイツ 34.5(1.2) 91.8(0.0) 73.2(4.9)
イラン 33.3(▴2.4) 60.7(0.0) 24.4(0.0)
オランダ 32.1(▴3.6) 90.2(0.0) 78.0(0.0)
ベルギー 32.1(0.0) 88.5(0.0) 68.3(0.0)
サウジアラビア 28.6(▴2.4) 59.0(0.0) 51.2(0.0)
ポーランド 28.6(0.0) 85.2(0.0) 73.2(0.0)
シリア 21.4(2.4) 34.4(0.0) 12.2(4.9)
トルコ 21.4(2.4) 82.0(0.0) 68.3(0.0)
【注】国の並びは核軍縮分野で評点率の高い順。かっこ内の評点率は満点に対する得点の割合で、前年比の▴はマイナス
※はストックホルム国際平和研究所が調べた2018年1月現在の推定核弾頭保有数
取りまとめは県の委託を受けたシンクタンク「日本国際問題研究所」(東京)が担った。戸崎洋史主任研究員(核問題)は県庁での記者会見で「核軍縮は停滞、あるいは逆行していると言える。米国の核体制の見直しなどで世界の安全保障環境が非常に厳しくなっている中で、核兵器の抑止力などへの再評価が進んでいる」と総括した。
36カ国の内訳は、核拡散防止条約(NPT)で認められた核兵器保有5大国、事実上保有する4カ国、非保有国の27カ国となる。研究所が18年の動きを基に、核軍縮▽核不拡散▽核物質の安全管理―の計65項目で採点。満点と比べてどのくらいの割合かを示す「評点率」で評価した。
核軍縮の採点は32項目。北朝鮮は「重要な政策の発表、活動の実施」「核軍縮に関する国連総会決議への投票行動」など4項目で評価を上げ、評点率は6・2ポイント改善してマイナス2・0%だった。核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中止決定、米朝首脳会談などが影響した。
核兵器保有の5大国と事実上保有する核保有4カ国のうち、北朝鮮と英国を除く7カ国が評価を下げた。保有する核兵器の近代化・強化の動きが進んでいる点などが下落につながった。
米国は米朝首脳会談などを受けて2項目で上昇し、核兵器近代化の動きが見られるなどとして2項目で低下した。評点率は0・7ポイント減の15・8%。中距離核戦力(INF)廃棄条約を巡り、昨年10月に離脱方針を表明した点については「離脱表明だけでは核軍拡への具体的な動きにつながっているとはいえない」として評価に反映させなかった。
日本の評点率は53・6%で11番目に高い。前年比では2・4ポイント下がった。政府が核兵器の材料となる核物質の製造を禁止する「兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)」の交渉開始に向けて活発に取り組んだ17年と比べて、目立った動きがないのが響いた。
残る2分野のうち、核不拡散では5大国の米国、中国、フランスが評点率を下げた。上昇したのはニュージーランド、フィリピン、カザフスタンの3カ国にとどまった。核物質の安全管理では、米国や中国など11カ国が改善し、英国やロシアなど25カ国は増減なし。悪化した国はなかった。
(2019年4月5日朝刊掲載)
<各国の核兵器廃絶の取り組み評点率>
国名 核軍縮(%) 核不拡散(%) 核物質の安全管理(%)
5大国
英国※215 24.8(0.0) 83.0(0.0) 61.0(0.0)
フランス※300 19.8(▴3.0) 80.9(▴4.2) 63.4(0.0)
米国※6450 15.8(▴0.7) 85.1(▴2.1) 61.0(2.5)
中国※280 7.9(▴2.0) 63.8(▴2.2) 65.9(4.9)
ロシア※6850 5.6(▴2.1) 74.5(0.0) 46.3(0.0)
4カ国
インド 2.0(▴2.1) 34.9(0.0) 56.1(2.4)
※130~140
パキスタン 0.0(▴2.0) 23.3(0.0) 46.3(2.4)
※140~150
イスラエル※80 -2.0(▴2.0) 30.2(0.0) 53.7(0.0)
北朝鮮 ―2.0(6.2) 0.0(0.0) ―4.9(0.0)
※10~20
非保有27カ国
オーストリア 78.6(7.2) 85.2(0.0) 68.3(0.0)
ニュージーランド 76.2(4.8) 93.4(3.2) 68.3(2.4)
メキシコ 69.0(3.5) 82.0(0.0) 80.5(7.3)
ブラジル 63.1(▴1.2) 70.5(0.0) 68.3(0.0)
カザフスタン 61.9(4.8) 80.3(3.3) 68.3(4.9)
フィリピン 60.7(▴3.6) 85.2(3.2) 68.3(4.9)
スウェーデン 59.5(▴2.4) 86.9(0.0) 92.7(0.0)
南アフリカ 59.5(▴1.2) 86.9(0.0) 61.0(0.0)
インドネシア 59.5(0.0) 78.7(0.0) 75.6(2.4)
スイス 59.5(1.2) 82.0(0.0) 78.0(0.0)
日本 53.6(▴2.4) 86.9(0.0) 70.7(0.0)
チリ 52.4(▴10.7) 85.2(0.0) 73.2(0.0)
ナイジェリア 52.4(▴3.6) 73.8(0.0) 73.2(17.1)
アラブ首長国連邦 48.8(▴3.6) 73.8(0.0) 68.3(0.0)
(UAE)
カナダ 45.2(0.0) 85.2(0.0) 80.5(0.0)
オーストラリア 41.7(0.0) 91.8(0.0) 78.0(0.0)
エジプト 38.1(▴4.8) 60.7(0.0) 34.1(0.0)
韓国 35.7(2.4) 83.6(0.0) 90.2(0.0)
ノルウェー 34.5(▴2.4) 88.5(0.0) 68.3(0.0)
ドイツ 34.5(1.2) 91.8(0.0) 73.2(4.9)
イラン 33.3(▴2.4) 60.7(0.0) 24.4(0.0)
オランダ 32.1(▴3.6) 90.2(0.0) 78.0(0.0)
ベルギー 32.1(0.0) 88.5(0.0) 68.3(0.0)
サウジアラビア 28.6(▴2.4) 59.0(0.0) 51.2(0.0)
ポーランド 28.6(0.0) 85.2(0.0) 73.2(0.0)
シリア 21.4(2.4) 34.4(0.0) 12.2(4.9)
トルコ 21.4(2.4) 82.0(0.0) 68.3(0.0)
【注】国の並びは核軍縮分野で評点率の高い順。かっこ内の評点率は満点に対する得点の割合で、前年比の▴はマイナス
※はストックホルム国際平和研究所が調べた2018年1月現在の推定核弾頭保有数