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被爆体験証言者 大幅に減少37人 平和文化センター 伝承者を育成

 原爆資料館(広島市中区)で自らの被爆体験を語る市の「被爆体験証言者」が本年度、昨年度より8人少ない37人となった。証言者の高齢化を背景に近年は1、2人ずつ減っていたが、引退や死亡が重なり大幅な減少となった。委嘱する広島平和文化センター(同)は、新たな証言者の発掘に加え、証言を受け継ぐ「被爆体験伝承者」の育成と活用に力を入れる。

 9日、同館で委嘱式があった。本年度の証言者は新たに加わった1人を含め、市内外に住む76~93歳の37人。昨年度は45人が登録していたが、ことし1月に亡くなった核物理学者の葉佐井博巳さんたち3人が死去。ほかに6人が健康上の理由や、体調を心配する家族の要望で引退を決めた。

 証言者は、同館や派遣先の学校などで講話をする。昨年度は計1742回、計約13万5千人に被爆の記憶を伝えた。1983年に制度を始め、当初は被爆者団体からの紹介で証言者を確保していたが、12年度に2年間の研修制度を導入。これに合わせ自薦が可能になったことで、14年度以降は44~49人で推移していた。

 同館啓発課は「続けてほしいが、高齢であり仕方ない面もある」。高齢化がさらに進む中、2年間の研修は被爆者にとり負担にもなっており、新たな証言者の掘り起こしは思うように進んでいないという。

 一方、伝承者は本年度、3年間の研修を終えた15人が加わり計131人となった。昨年度は計約8万5千人の前で講話しており、同課は引き続き、育成と活動の場の確保に力を入れる。

 この日、新たに伝承者となった主婦中本実鈴さん(63)=東区=は、爆心地から約2キロの山手町(現西区)で被爆し、昨年6月に亡くなった府中町の鳥越不二夫さんの証言を受け継ぐ。「指導では『あんたらが私たち被爆者の代わりに語るんじゃ』との言葉をもらった。身を削り伝えてくれた鳥越さんの思いは途切れさせない」と決意を語った。(明知隼二)

(2019年4月10日朝刊掲載)

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