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社説・コラム

『この人』 第13代原爆資料館長に就任した 滝川卓男さん

 原爆資料館は核兵器の非人道性を伝える実物資料を軸に展示内容を一新し、25日に本館のリニューアルオープンを控える。この春、広島市役所を定年退職し、館長に就いた。「身の引き締まる思い。歴代館長の功績を受け継ぎながら、自分なりに持ち味を出していきたい」

 呉市出身。大学卒業後は広島国税局に国税専門官として採用され、山口県内の税務署に2年勤務した。転勤が多かったこともあり、広島市職員に転身。こども未来局長を最後に退くまで、七つの局を経験した。「被爆体験を次世代に伝える活動を充実させたい」と思い描く。

 資料館との接点は、平和施策総合推進担当課長だった時。被爆体験を語り継ぐ「伝承者」の養成事業の準備に携わった。その後、東京事務所長として被爆者団体と交流も。「36年間、どこにいても平和都市のまちづくりを進めてきた先輩や先人に思いをはせながら市の業務に取り組んできた」。改めて貴重な務めだとかみしめる。

 資料館の2018年度の入館者数は152万2453人で、近年は高水準で推移する。外国人は43万4838人で過去最多を更新した。「注目度の高さを肌で感じている。国内外の多くの人に足を運んでもらい、被爆の実相に向き合ってほしい」。過去に見学した市民の再来館も願う。

 妻と長男、長女の家族全員が公務員。市職員だった同い年の妻は公民館長に就き、定年後も「ダブル館長」として引き続き市民生活を支える。趣味は旅行。国内のJR路線の9割を制した「乗り鉄」でもある。中区で妻と暮らす。(野田華奈子)

(2019年4月12日朝刊掲載)

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