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福島の女性20人、不安乗り越え起業 広島の被爆者の生き方に感銘

広島の医師と交流で決意

会津木綿のピアス発売 若い力 故郷PR

 福島県郡山市の女性だけでつくる企画会社が、初の商品としてピアスを発売した。福島第1原発事故後、将来の結婚や出産、子育てに不安を抱えていた女性(29)が、広島市中区の産婦人科の女性医師(65)の励ましで起業。同世代の女性約20人と福島に生活の基盤を築こうとしている。(桑田勇樹)

 株式会社「女子の暮らしの研究所」を昨年12月に設立した。社員は10~20代。当面は会社勤めや大学生をしながら、休日に無給で働く。主な業務はアクセサリーや旅行商品の企画、カフェの運営。経営が軌道に乗れば、同社一本に絞る予定だ。

 創業した日塔(にっとう)マキ社長は郡山市で被災した。当時は会社員。2011年11月、千葉県船橋市に避難した。「子どもを産めるだろうか」「差別を受けるのではないか」。被曝(ひばく)の影響に脅え続けた。

 転機は12年。被災した子どもの保養旅行に同行して広島市を訪れた。一行を招いた広島市安佐北区のNPO法人の関係者から紹介されたのが広島市中区の産婦人科医河野美代子さんだった。健康の不安を打ち明けると、河野さんはこう答えた。「広島で被爆した女性は同じ悩みを抱えながらも、前向きに生きてきた。一緒に考えていこう」

 一人じゃないと思うと勇気が湧いた。「福島に腰を据えて暮らそう」と覚悟した。同世代と仕事をしながら、不安や悩みを包み隠さず話し合える場として会社を設立した。

 8日に発売したピアスは、特産の会津木綿を使った。商品をきっかけに福島が話題に上る機会が増えるよう願う。1組1575円。主にインターネットで販売するが、5月には広島市中区のひろしまフラワーフェスティバル会場にブースを構え、販売する予定だ。

 「前に進み始めた姿を広島の人々に見てほしい」と日塔社長。河野さんは「不安を乗り越えようと、がむしゃらに生きた広島の女性と重なる。福島の話題は楽しいものばかりではないけど、じっくり気持ちを聞いてみたい」と再会を楽しみにしている。

(2013年3月10日朝刊掲載)

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