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戦争が変えた画家の人生 四国五郎展 26日から大阪

 戦後の広島で、反戦反核の思いを絵や詩に託し続けた四国五郎(1924~2014年)。峠三吉「原爆詩集」の表紙絵や絵本「おこりじぞう」を手掛けたことで知られているが、市民運動と溶け合う多彩な表現は、既存の「芸術」の枠にとどまらない。没後には回顧展や評伝刊行が相次ぎ、国内外で再評価が進む。

 その動向を伝える展覧会が26日、大阪府豊中市の大阪大総合学術博物館待兼山修学館で始まる。「四國五郎展~シベリアからヒロシマへ」は、関西では初めての回顧展。戦争体験を機に被爆地で絵筆を握る人生を選んだ四国の歩みを、70点余りの作品からたどる。

 従軍とシベリア抑留を体験した四国は1948年、被爆で変わり果てた広島に復員。戦争が終わったら一緒に絵を描こうと誓い合った最愛の弟の被爆死を知る。その怒りと悲しみを原動力に生涯創作を続けた。

 本展では、シベリアでのスケッチ、帰国後に抑留体験をまとめた絵日記のような画文集のほか、ヒロシマをテーマに反戦を訴えた油彩画や絵本原画を展示。峠らと協働した「辻詩」など文化運動の軌跡も伝える。

 長男の光さん(62)=大阪府吹田市=は「過酷な体験によって生き方を変えた一人の人間の姿を通し、広島以外でも多くの人が、戦争や原爆といった人類の負の歴史を考える場になれば」と期待している。

 同大などの主催。7月20日まで。日曜・祝日休館(5月2、3、19日を除く)。入場無料。(森田裕美)

(2019年4月24日朝刊掲載)

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