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朝鮮分断の起源 原爆投下も影響 慶応大の小此木名誉教授

 慶応大の小此木政夫名誉教授(74)が「朝鮮分断の起源―独立と統一の相克」を出版した。米国と旧ソ連の軍事戦略や安全保障政策に翻弄(ほんろう)されながら、朝鮮半島を分断する北緯38度線が設定された背景に迫る。米国による広島、長崎への原爆投下が分断に及ぼした影響も示唆している。

 「三八度線設定の地政学」「南朝鮮解放の政治力学」「冷戦の開始と分断への道」など6章で構成。第2次世界大戦から冷戦期にかけ、米国とソ連の軍事戦略が変化する過程を、当時の大国の指導者たちの発言など歴史資料から分析している。

 また米国が原爆を開発し、1945年8月、広島、長崎に投下したことが、大戦末期の米ソの朝鮮半島戦略を変え、半島分断の契機になったと指摘。「原爆投下は、広島や長崎にもたらされた被害とは別の形で、朝鮮半島の現代史に大きな影響を及ぼした」と強調している。

 慶応義塾大学法学研究会。572ページ。8640円。(桑島美帆)

(2019年4月24日朝刊掲載)

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