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惨禍伝える新展示 原爆資料館 本館きょう再開

「あの日」心に刻んで

 原爆資料館(広島市中区)は24日、25日に本館をリニューアルオープンするのを前に、館内を報道陣に公開した。犠牲者の遺品など実物資料を中心に展示内容を刷新した。来館者の感性に訴え掛ける形で、原爆の惨禍と核兵器の非人道性を伝える。

 被爆者や遺族の苦しみに向き合う「魂の叫び」のコーナーはこの日、初めて公開された。被爆時に着ていた衣服や遺書などを遺影とともに解説。奪われた一人一人の人生に思いを寄せる空間になっている。ブラウスやワンピースなどは、着ていた様子をイメージしやすいよう約40度の傾きがある展示台に置く手法で見せる。外国人の被爆を伝えるコーナーも初めて設けた。

 一部公開されていた「8月6日の惨状」のコーナーでは、建物疎開作業中に被爆した生徒の衣服や布製かばんを集めて並べ、その周りに折れ曲がった鉄骨の梁(はり)などの大型資料を配置。大やけどの負傷者の写真と、市民が描いた原爆の絵を組み合わせて展示するなど、あの日の惨状をいかに想像してもらうかに工夫を凝らしている。

 本館には、実物資料305点(複製6点を含む)をはじめ、原爆の絵や写真など計538点の資料を並べる。

 原爆資料館の大規模リニューアルは3度目で、有識者による展示検討会議が2010年8月に議論を始めた。本館で「被爆の実相」を、東館で「核兵器の危険性」や復興と平和活動をたどる「広島の歩み」を学べるよう整理した。東館はすでに展示改装を終え、先行して17年4月に再開した。(野田華奈子)

原爆資料館
 1955年に本館、94年に東館が開館した。広島市は国重要文化財の本館の耐震化を進め、被爆の惨状や核兵器の非人道性をより分かりやすく伝える施設を目指し、2014年3月に全面改修に着手。東館は同年9月に展示スペースを閉じて改装し、17年4月に再び開館した。入れ替わって本館を閉鎖し、内部改修と耐震化を進めた。耐震化工事は19年度中に終える。総事業費は70億3500万円。資料館の18年度の入館者数は152万2453人。外国人の数は43万4838人で6年連続最多を更新した。

(2019年4月25日朝刊掲載)

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