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苦しみ 恐ろしさ 胸に 原爆資料館本館リニューアルオープン

入館者ら好意的 展示や説明 一層の充実望む声

 原爆資料館本館(広島市中区)がリニューアルオープンした25日、訪れた入館者は「原爆の恐ろしさがよく分かる」「被爆者や家族の思いが伝わってきた」などと、おおむね好意的に受け止め、涙を浮かべながら見学する姿も見られた。一方で今後のさらなる展示内容の充実や、説明の工夫を求める意見も上がった。

 改装では、原爆被害の事実を伝えるだけでなく、被爆者や遺族の苦しみに向きあってもらうことを重視した。「亡くなった子どもの遺品や母親の言葉を見ていると、胸が締め付けられた。戦争はいけない」。初めて立ち寄った神奈川県逗子市の別所まりこさん(70)は、涙ながらに言葉をつないだ。

 近隣の小学生や修学旅行生も絶え間なく訪れた。資料館には何度も来ているという広島市中区の本川小6年三本凪紗さん(11)は「以前よりすごく怖く感じた。ビリビリに破れた子どもの服が心に残った」と友人と肩を寄せ合った。

 かつてあった被爆直後を再現したろう人形は撤去され、実物中心の構成となった。修学旅行の引率で毎年のように来館するという倉吉市立成徳小の堀良一校長(57)は「従来は子どもの感想文がろう人形に集中していた。新しい展示で惨状が伝わるのか、子どもの反応に注目したい」とした。

 外国人被爆者の存在を伝えるコーナーも初めて設けられ、海外の観光客も関心を寄せた。英国スコットランドの会社員ジョシュ・マイヤーズさん(25)は「高校では原爆の被害を学んでおらず、被害の大きさを知って動揺している。被爆者がどのように苦しんで亡くなったのか考えさせられた」と表情を曇らせた。

 感性に訴えかけるとして館内の説明文は最小限に。解説するピースボランティアの役割もこれまで以上に重要になり、ボランティアで被爆者の川本省三さん(85)=西区=は意気込む。「一つ一つに犠牲者や遺族のストーリーがある。使命感を持って案内したい」

 被爆者団体などの関係者も事前に見学し、さまざまな反応を寄せた。「あの日の悲惨さが伝わる展示になった。特に本館入り口の少女の写真や子どもの遺品は訴える力があった」と話すのは広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧智之理事長代行(77)。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(74)は「じっくり見ないと伝わらない構成。館内の混雑が続く中でどう受け取ってもらえるか不安もある」と、展示や説明の工夫を求めた。

 被爆者でもある元原爆資料館長の原田浩さん(79)は「惨状が『この程度』と思われないよう、被爆者の声を取り入れ、展示を必要に応じて見直してほしい」と訴えた。(永山啓一、江川裕介、新山京子)

(2019年4月26日朝刊掲載)

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