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東京の平和集会で証言 張本勲さんの姉・小林愛子さん

語る…弟とさまよった「あの日」

 広島市出身の被爆者で野球解説者の張本勲さん(78)が、テレビ番組の外で名ぜりふの「あっぱれ」を送る相手がいる。核兵器禁止条約の締結を求める署名活動に加わった姉、小林愛子さん(81)=兵庫県加古川市=だ。小林さんは24日夜に東京都内であった平和集会で、きょうだいの被爆体験などを語った。

 小林さんは「ヒバクシャ国際署名」に賛同し、昨秋に約900人分の署名を被爆者団体に届けた。飛び込みで官公庁や企業を訪ねたり、ホテルの宿泊客に声を掛けたりして集めた。「お姉ちゃん、あっぱれや」。張本さんから称賛とねぎらいを受けたという。

 小林さんを突き動かすのは7歳の時の体験だ。原爆が投下された時、広島市段原新町(現南区)の自宅にいた。無数のガラス片が体に刺さった母が叫んだ。「勲を連れて逃げんさい」。遺体だらけの街をさまよう。慕っていた小5の姉は全身を焼かれ、苦しみながら数日後に亡くなった。

 家族は戦後「あの日」について話さなかった。「悲しすぎたから」。小林さんが証言活動を始めたのは60歳を過ぎて。張本さんとは、署名についての報告が初めてする原爆の話となった。

 「核のない世界を願い、祈り、信じる」。小林さんは平和集会での被爆証言をそう結び、拍手を浴びた。集めた署名は1800人分を超えた。「亡くなった姉にも背を押されている気がする。動ける限りは活動を続けたい」と話した。(田中美千子)

(2019年4月26日朝刊掲載)

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