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核軍縮 乏しい好材料 NPT準備委 29日開幕

 2020年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第3回準備委員会が29日、米ニューヨークの国連本部で始まる。核超大国である米国とロシアの対立や、核兵器禁止条約を巡る加盟国の分断は深まっており、核軍縮の進展に向けた好材料が乏しい中での開催となる。NPT発効50年の節目となる20年再検討会議の行方を占う準備委。想定される論点をまとめた。(明知隼二)

合意積み上げ軽視も

◆核超大国の動き

 米国は2月、中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を発表。ロシアも呼応し、同条約が8月にも失効する可能性は高まっている。条約破棄を推進したボルトン米大統領補佐官たち「強硬派」の姿勢は、準備委での米国の発言、ロシアの対応にも影響しそうだ。

 米国が近年、強調するのが「核軍縮のための環境づくり」だ。核軍縮を進めるには、それを許す安定した国際情勢の整備が先だとの主張で、これまで訴えてきた段階的な核軍縮からさらに後退している。核軍縮への具体的な合意の積み上げの軽視ともとれる立場で、NPT体制そのものを揺るがしかねず、ほかの加盟国の反応も注視される。

問われる日本の姿勢

◆核兵器禁止条約

 20年再検討会議は、核兵器禁止条約が17年7月に国連で採択されてから初の会議となる。禁止条約は使用や開発、保有、威嚇などを明確に禁止する。発効に向けて23カ国・地域が批准したが、核兵器保有国や、米国の「核の傘」に頼る日本などの同盟国、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は未署名だ。

 保有国の反対姿勢は強硬だ。米国は、同条約は世界の安全保障の現実を無視しているなどと批判。ロシアも準備委に事前提出した書面で「無条件に核兵器を手放させようとする試みは逆効果だ」などと主張する。

 しかし、NPTは保有国を固定化する不平等な面があるからこそ、加盟国に核軍縮への「誠実な交渉」を課している。来年の再検討会議が15年の前回に続いて再び決裂するのを避けるためにも、保有国には禁止条約を支持する多数の加盟国の声に正面から向き合う姿勢が求められる。

 またNPTは核軍縮の努力を全加盟国に求めており、オーストリアをはじめ禁止条約の推進国や非政府組織(NGO)が、保有国だけでなく同盟国に対しても批判を強める可能性もある。被爆国でありながら禁止条約に背を向け続ける日本の姿勢が問われる。

イラン合意など討議

◆地域問題

 準備委では、地域ごとの問題を討議する時間も設ける。15年の再検討会議が決裂する要因となった中東非核地帯構想や、米国が昨年5月に離脱を表明したイラン核合意などを取り上げる見通し。03年にNPT脱退を表明した北朝鮮の核開発問題なども議論されそうだ。

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被爆者 アピール強化
 準備委には被爆地・広島の自治体トップが参加し、開催に合わせて被爆者も核兵器廃絶を求めるアピールを強める。これら国際的な場での発信が注目される。

 広島市の松井一実市長と広島県の湯崎英彦知事は、18年にスイス・ジュネーブであった前回に続いて現地入り。松井市長はNGOセッションでのスピーチ、湯崎知事はアントニオ・グテレス国連事務総長との面会などを通じて、核軍縮の前進を訴える。

 広島市や福山市の高校生は、平和首長会議(会長・松井市長)が主催するフォーラムに参加する。日本被団協(東京)の木戸季市事務局長たちは、核兵器廃絶を求める国際署名をアピールし、現地の若者に被爆証言をする。

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核拡散防止条約(NPT)
 1970年に発効し、約190カ国が加盟する。米国、ロシア、英国、フランス、中国に核兵器の保有を認める一方、核軍縮の交渉義務を課す。それ以外の国には核兵器取得を禁じ、原子力の「平和利用」を認める。事実上の核保有国のイスラエルと、インド、パキスタンは未加盟。北朝鮮は2003年に脱退を表明した。条約の運用状況を点検するため、5年ごとに再検討会議を開催し、その3年前から毎年、準備委員会を開いている。前回の15年会議では、合意文書を採択することができなかった。

(2019年4月29日朝刊掲載)

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