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社説・コラム

天風録 『「令和初」の憲法記念日』

 にわかに流行中の枕ことばを冠して言えば、きょうは「令和初」の憲法記念日。天皇陛下がお言葉で触れられた第1条をあらためてひもといた人もいるのではなかろうか▲「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって…」。条文にある「統合」の意味を重く受け止めるならば、象徴天皇のありようとは、1億2千万人余が心を一つにできるかどうかが肝心なのかもしれない▲第1条と対を成すのが第9条だと、思想家の柄谷行人(からたに・こうじん)氏が著書「憲法の無意識」で指摘している。戦後日本の安定に天皇制が必要と考えたマッカーサー元帥が、国際世論を納得させるため戦争放棄を明言させたと▲さらには全ての条文に先駆ける憲法前文も、第9条とペアを組む。「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」▲崇高な理想にすぎない、などの批判が常に付きまとう。だが新たな冷戦の時代とも呼ばれる国際情勢にあって、その中身は色あせず、各国がまねしてくれればとさえ思えてくる。何より令和、すなわち「よき平和」を念じて読み返せば、すっと胸に染みる。

(2019年5月3日朝刊掲載)

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