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被爆 怒りと悲しみの短歌集 廿日市の田中さん 全国出版

 原爆への怒りや悲しみを詠み続ける廿日市市地御前の被爆者、田中祐子(さちこ)さん(90)=写真=が短歌集「生きる」を幻冬舎から出版した。これまで自費出版した2冊の作品をまとめたもので、全国の幅広い世代に手に取ってもらうことを願っている。

 副題を「平和で豊かな未来のために」とした。計709首を収める。四季の移ろいやパーキンソン病の闘病を詠んだ短歌を中心に、「原爆」についてうたった60首を織り交ぜる。

 田中さんは安田高等女学校(現安田女子中高)専攻科で学んでいた16歳の時、爆心地から約1.8キロの平野町(現広島市中区)の自宅で被爆し、家の下敷きになった。

 「爆死せる従妹(いとこ)を瓦礫(がれき)の真ん中で焼きし思い出消ゆる事なし」。被爆死した1歳年下のいとこをわが手で「無感情に」焼いた過酷な体験をつづる。「被爆せる我に命を与えしは逝きし級友(とも)らの願いならむか」。親族や同級生の生きた証しと、いまだ癒えない悲しみを刻む。

 田中さんは「戦争や原爆の使用は二度とあってはいけない。悲惨さを実感してほしい」と望む。1080円。(山本祐司)

(2019年5月6日朝刊掲載)

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