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原爆孤児の苦難 折り鶴の翼でブラジルへ 小学校が展示 反響大きく

川本さん証言に感銘 ナカガワさん橋渡し

 被爆者の川本省三さん(85)=広島市西区=が作った折り鶴と紙飛行機がブラジル・サンパウロのイタカ小に常設展示され、その写真と礼状が同校から届いた。川本さんは「地球の裏側の子どもたちに平和への願いが伝わってほしい」と喜んでいる。(金崎由美)

 川本さんは原爆資料館(中区)のピースボランティア。11歳の時、原爆で家族6人を失って一人になり過酷な人生を送った。飢えや病気で死んでいった原爆孤児の苦しみを生き残りとして伝えようと、展示解説や体験証言を続ける。亡き母から作り方を習った紙飛行機に小さな鶴を乗せた「おりづるひこうき」をこれまで25万個近く作り、来館者や修学旅行生に手渡しているという。

 「ひこうき」がイタカ小に届くきっかけをつくったのは、サンパウロ大研究員のクリスチアニ・ナカガワさん(37)だ。昨年1月、博士論文の研究活動で広島市内に滞在した際、川本さんの体験を聞き取り胸を打たれた。「戦争中に遊べないまま死んだ子の願いを乗せた自由の翼」をブラジルに持ち帰ろうと、川本さんに50個作ってもらった。

 ナカガワさんがその一部を長女マイさん(8)の通うイタカ小に寄贈すると、大きな反響があったという。円筒形のアクリルの箱の中につるされた長さ約10センチの「ひこうき」が、川本さんの折った鶴とともに正面玄関近くに置かれた。

 イタカ小は「この贈り物を大切に守りながら、川本さんの被爆体験を保護者や子どもたちと伝えていく」と記した英語の礼状を用意。ナカガワさんと親交のある二口とみゑさん(69)=佐伯区=がサンパウロを訪問した機会に託され、川本さんの手に渡った。

 川本さんはピースボランティア仲間の原田健一さん(74)=東区=の助けを借りて写真が添付された礼状を読み、「こんなにきれいにして置いてくれているとは」と頰を緩めた。

 「子どもたちは『ひこうき』を通して、原爆孤児の苦難と被爆者の思いを確かに感じ取っている」とナカガワさんは話す。「娘が『広島に行って川本さんと会いたい』と願っている。今度はぜひ家族旅行で被爆地を訪問したい」

(2019年5月6日朝刊掲載)

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