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被爆証言「分かち合いを」 核廃絶署名を支援 米NGOのレベッカ・アービー代表

11年に広島訪問 悲劇知り川辺で涙

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第3回準備委員会で、米国の非政府組織(NGO)「ピーク・インスティテュート(PEAC)」は、核廃絶を願う被爆者の署名活動をアピールするサイドイベントを開いた。代表のレベッカ・アービーさん(37)=米ニュージャージー=が、広島で被爆者と語り合ったのが出発点。「知るだけでなく、伝えなければ」。背中を押され、訴えを広げる。(ニューヨーク発 明知隼二)

 国連本部で3日にあったサイドイベント。「被爆証言が心に触れたなら、人と分かち合ってほしい。それが核兵器のない世界につながる」。アービーさんは来場者に語り掛けた。全ての国に核兵器禁止条約の締結を求める「ヒバクシャ国際署名」に協力。日本被団協の木戸季市事務局長(79)たちに証言を依頼した。

 名古屋市で英会話講師をしていた2011年、初めて原爆資料館(広島市中区)を訪れた。「教科書で学んだ事実と広島の現実はかけ離れていた」。母国がもたらした悲劇に衝撃を受け、原爆ドーム前の川辺に座って泣いていると、ある被爆者が声を掛けてきた。

 ボランティアガイドの胎内被爆者、三登浩成さん(73)=広島県府中町=が隣に座り、母の被爆体験を聞かせてくれた。米国人が憎くないのかと尋ねると、「あなたが罪を感じることはない。広島で起きたことを知ってくれれば、それでいい」と。気付けば数時間を共に過ごしていた。

 出会いの後、アービーさんは三登さん母子のドキュメント映画を制作。未経験だったが、資金をインターネットで募ると、協力者が次々と現れた。16年、PEACの設立につながった。「情熱を持って世界に踏み出せば、支えてくれる人がいる」と言う。

 禁止条約の行方を注視する。準備委には軍縮教育を兼ねて国内外の大学生を連れて参加し、各国大使とも面会した。「体の負担をおして語り続けてきた被爆者に残された時間は決して長くない。私たちがやらないと」。あらためて誓った。

(2019年5月9日朝刊掲載)

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