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被爆者手当と手帳 同時申請が可能に 市民団体「周知努めて」

 被爆者が健康障害などに応じて受け取る手当について4月から、被爆者健康手帳の交付申請と同時に手当の申請もできるようになった。厚生労働省が、窓口となる都道府県と広島、長崎両市に通知を出した。在外被爆者を支援する市民団体は「大きな改善だが、海外の被爆者たちへの説明が不十分。周知に努めてほしい」と訴えている。

 これまでは被爆者が手帳を申請し、交付決定後に手当を申請し、受給する流れだった。手帳の交付には被爆の事実を確認する審査があるため、申請から少なくとも数カ月、半年以上かかることも多く、その間は受給できなかった。本年度からは同時に申請でき、手帳の交付後、申請時にさかのぼって手当を受給できる。

 今年1月、韓国人3人への手帳交付を長崎市に命じた長崎地裁判決が確定した際、市は手当を原告が事前に申請していた約1年前にさかのぼって支給。厚労省はこうした事例を踏まえ、3月29日付で「手帳申請の際に手当の申請を同時に受理しても差し支えない」との通知を自治体に出した。

 広島市は4月、手帳を申請中の人に説明文を郵送した。韓国在住者には韓国語訳を送ったが、文書は簡潔に変更点を示しただけ。問い合わせ先として電話番号を記した市援護課も、韓国語で常時応対できる態勢にはなっていなかった。

 天満町(現広島市西区)で被爆し、昨年12月から手帳を申請中という韓国慶尚南道の男性(79)は、文書を受け取った後「意味が分からない」などと、「韓国の原爆被害者を救援する市民の会広島支部」に不安を訴えた。中谷悦子支部長たち3人が今月8日、市役所を訪れ、担当者に伝えた。

 同会広島支部によると、4月20日時点で韓国内で67人が手帳を申請中。中谷支部長は「被爆者は高齢でインターネットでの情報収集も難しい。少なくとも韓国語で相談できる窓口を示してほしい」と求めている。

 市援護課の山本雅英課長は「相談や手続きは韓国の日本総領事館でもできる。申請者が不安を抱かないよう相手の立場に立った対応を考えたい」とする。(永山啓一)

(2019年5月10日朝刊掲載)

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