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核軍縮巡り埋まらぬ溝 NPT実効性維持へ課題

 2020年にあるNPT再検討会議の第3回準備委員会での討議は、NPTの3本柱の一つである核軍縮を巡り、核兵器保有国と非保有国との間で溝が広がる現状を浮き彫りにした。核兵器禁止条約にもつながった対立の構図は解消されず、来年で発効50年となるNPTの実効性をどう保っていくのか、再検討会議に向けて重い課題を残した。(ニューヨーク発 明知隼二)

 「50年にわたり核兵器の拡散を防ぎ、削減を促し、原子力の平和利用を推進してきた」。米国はNPT3本柱のいずれも「成功」を強調した。しかし、多くの非保有国の認識は異なる。「不拡散と平和利用は進んだが、軍縮はまだだ」(キューバ)。核軍縮に熱心な非同盟諸国(NAM)が「NPTの核軍縮の義務には拘束力がある」と強調したように、保有国の責任を追及する声が相次いだ。

 特に隔たりが見られたのは禁止条約を巡る主張だった。非保有国側は、条約推進国のオーストリアやブラジルにとどまらず、アジアやアフリカ、中南米などの幅広い国や地域グループが条約への賛同を表明した。最終盤に再び示された勧告案は「議論をそのまま反映」(サイード議長)し、「核兵器の法的禁止の必要性」の項目も盛り込んだ。

 ただ現状では、この案での採択はハードルが高かった。保有国は一貫して禁止条約について「NPTを弱体化させる」(フランス)などと批判を繰り返した。

 保有国は近年、禁止条約の採択を尻目に、核軍縮を現実的に進めるためには国際的な安全保障が重要という「環境づくり」の訴えに重心を移しつつある。準備委では、中心となる米国が今後の軍縮を議論する新たなワーキンググループの設置を提案した。複数の非保有国は警戒を強め、「核軍縮の義務を避ける口実にすべきではない」(ブラジル)などとけん制した。

 準備委は、米ロが相互に中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を表明するなど、核軍縮が逆行する国際情勢の中で開かれた。両国はともに相手国を非難。さらに米国は昨年脱退したイラン核合意を巡ってイランとも対立し、激しい言葉の応酬を続けた。各国の懸念が的中した形で、来年の本番に向けた合意形成の難しさを予感させた。

 前回15年の再検討会議では合意文書を採択することができず、2回続けて失敗すればNPT体制が揺らぎかねない。長崎大核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎副センター長は、保有国と非保有国の対立について「核軍縮を巡る根本的な解釈の違いがある。この対立をどう解決するかは、来年に向けた大きな課題になるだろう」と指摘。再検討会議の議長選出など事務的な決定が順調だったことに触れて「最低限の成果は得られた」と期待をつないだ。

(2019年5月12日朝刊掲載)

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