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判断先送りで割れる専門家見解 上関埋め立て 

 中国電力上関原発建設予定地(山口県上関町)の公有水面埋め立て免許延長について、許可不許可の判断を1年程度先送りした山本繁太郎知事の対応は妥当か―。行政手続きの専門家でも「1年も先送りする合理的な理由はない」「国のエネルギー政策が不透明な現段階ではやむを得ない」などと見解が分かれている。(門戸隆彦)

 山本知事が先送りを表明した4日以降、県議会は、知事に近く先送りに理解を示す議員と、知事に批判的で対応を問題視する議員の発言が交錯する。11日には免許延長の即時不許可を求め、市民ら約200人が県庁付近でデモ行進もした。

 県は延長申請を公有水面埋立法や行政手続法に基づいて審査している。行政手続法は恣意(しい)的な審査の引き延ばしなどを防ぐため標準処理期間の設定を求めており、県は32日以内をめどと内規で定めている。

 県によると、統計資料の残る2007年度以降に同種の申請は8件。いずれも32日以内に許可している。

 しかし、今回は県が昨年10月上旬に延長申請を受けた後、4度の補足説明照会による審査中断を挟んで、2月27日に32日間を超えた。中電への補足説明照会中は審査期間にカウントしないものの、判断を1年も先送りする理由について、県は福島第1原発事故を挙げる。

 県港湾課は「上関原発は重要電源開発地点に指定されているが、今後継続するのかどうか(中電に)説明を尽くしてもらわないと判断できない」と説明。標準処理期間はあくまで目安で、判断先送りは「法の趣旨に反していない」とする。

 これに対し、愛媛大法文学部の本田博利教授(行政法)は「県は過去3年で中電が埋め立て工事を終えることができなかった合理的な理由だけを追求すべきだ。国のエネルギー政策の方向性を見極めようとしているのは明らかで職権乱用に当たる」と指摘する。

 一方、広島大大学院社会科学研究科の横山信二教授(行政法)は「国のエネルギー政策が不透明な現時点では許可権者である知事の政策的判断が優先される。法が具体的な標準処理期間を定めているわけでもない」としている。

(2013年3月13日朝刊掲載)

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