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[いのちを守る 検証 西日本豪雨] 移設前 原爆碑で法要 小屋浦で遺族や「守る会」

 坂町小屋浦地区の原爆慰霊碑の前で13日、死没者を弔う法要が営まれた。碑は、昨年7月の西日本豪雨による土砂崩れで一部が埋没する被害を受け、管理する地元の「原爆慰霊碑を守る会」が近く移設を始める。それを前に、遺族や会のメンバーたち約30人が集まり冥福を祈った。

 慰霊碑はJR呉線沿いの山際に立ち、線路を横切って行く必要がある。地元の被爆者有志でつくる守る会は安全面を考え、豪雨前から移設を検討。豪雨で背後の斜面が崩れて一部が土砂に埋まったため、遺族の理解を得て地区内の小屋浦公園への移設を決めた。

 この日は同地区の西昭寺の住職が読経し、遺族たちが手を合わせた。碑に父の名前がある広島市安佐北区の阿部愛子さん(88)は「今まで大切にされ、安全な場所へ移させてもらうことになり感謝でいっぱい」と声を詰まらせた。

 同地区には原爆投下後、広島市内で被爆した人たちが運ばれた。1971年発行の市の広島原爆戦災誌によると、慰霊碑の一帯には約150人が埋葬された。碑には確認された93人の名前が刻まれている。

 移設作業は今月下旬に始め、8月6日までの完了を目指す。費用は町が負担する。守る会の西谷敏樹代表(73)は「風化させることなく、原爆の悲惨さと平和の大切さを伝える碑を守っていきたい」と話した。(鴻池尚)

(2019年5月14日朝刊掲載)

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