×

ニュース

ベトナム枯れ葉剤 なお深刻  坂田監督「広島と重なる」 ドキュメンタリー映画 横川で公開中

 ベトナム戦争で米軍がまいた枯れ葉剤の被害に迫ったドキュメンタリー映画「沈黙の春を生きて」が、広島市西区の横川シネマで公開中だ。監督を務めた坂田雅子さん(65)=群馬県みなかみ町=は「多くの人を何十年にもわたって苦しめる点は原爆被害とも重なる」と、被爆地広島での初上映に特別な思いを寄せる。

 枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは、発がん性や異常出産の危険が指摘されている。

 作品では、ベトナムの子どもとベトナム帰還米兵の子ども計8人を追った。その中の一人、米国人女性ヘザー・バウザーさん(41)は、生まれつき右脚の膝から下や両手指の一部がない。

 坂田さんはバウザーさんと一緒に、枯れ葉剤の影響とみられる障害があるベトナムの子どもの家庭を訪問。バウザーさんが同じ困難に直面する子や母親と心を通わせていく姿を丁寧に描いている。

 坂田さんは10年前、報道写真家でベトナム従軍経験もあった米国人の夫を肝臓がんで亡くした。枯れ葉剤の影響を疑い、映画制作を始めた。「権力の犠牲になるのはいつも、何も知らない市民。広島の人に見てもらい、悲劇を繰り返さないための連帯のきっかけになれば」と話している。

 上映は22日まで。午前10時10分から1日1回。(教蓮孝匡)

(2013年3月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ