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電気でセシウム吸着、最大73・4%除去 近畿大教授が新技術

 電気を利用し、土壌の放射性セシウムを最大約7割除去する技術を、近畿大工学部(東広島市)の井原辰彦教授(無機材料化学)が開発した。東京電力福島第1原発事故に伴う除染作業への活用が期待でき、化学物質を使う方法より環境に優しいという。

 底に金属板を敷いた容器に汚染土と水を入れ、泥水にプラスの電極を差し入れ、金属板にはマイナスの電極をつなぐのが基本的な仕組み。プラスの電気を帯びたセシウムイオン(原子)をマイナスに帯電した金属板に引き寄せ、吸着する。

 福島県川俣町にある学校の校庭の汚染土10グラムと水道水35ミリリットルを使って近畿大工学部で実験。回収効率を高めるため、イオンを引き寄せやすい液体に吸着剤となる顔料の紺青(こんじょう)を混ぜ、容器の底の金属板に塗った。泥水を通さず、イオンだけを通す膜を張った。100ボルトの電圧を30分間かけ最大73・4%セシウムを除去できた。

 セシウムの除去には化学物質の使用が検討されている。電気を使えば環境に負荷をかけずに土を再利用できる可能性が広がる。

 福島県では除染作業で集めた汚染土をどこに運ぶか頭を痛めている。農家の農地再生への願いも切実だ。「実用化に向け、企業とも協力したい」と井原教授。既に特許を出願済みで、28日に大阪府の近畿大である日本原子力学会で発表する。(境信重)

(2013年3月13日朝刊掲載)

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