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ピースサインで平和発信 広島の塾生徒20人 原爆ドーム前で写真

不謹慎か否か 自ら考え

 広島市中区の原爆ドーム前で12日、小さな人だかりができました。市内の小中学生20人がピースサインを通じて平和を願うパフォーマンスを行ったのです。「原爆ドーム前でのピースサインは不謹慎なのだろうか」。そう問い掛けた中国新聞の記事を読んで、自分たちなりの答えを考えたそうです。(久保友美恵)

 この日、小学1年から中学3年までの20人が観光客の前で、笑顔でピースサインをしました。「We hope for world peace(私たちは世界平和を願っています)」などと手書きしたB4判の紙を持って。

 20人は安佐南区高取南の個人塾の生徒です。塾では週1回、塾長の大谷浩司さん(58)が自ら選んだ新聞記事を紹介。生徒が感想や意見を作文にまとめる練習をしています。

 その中で3月、ある記事に出合いました。「こちら編集局です―あなたの声から」の「ピースサイン 不謹慎?」という見出しの記事です。「原爆ドーム前での記念撮影でピースサインをする観光客がいる。配慮が足りないのではないか」。高齢男性からの問い掛けに、2人の記者がさまざまな人から意見を聞き、まとめた内容でした。

 安西小5年の西村海桜(みお)さん(10)は「ピースをするのは原爆で亡くなった人に悪い」と考えました。伴中2年の吉岡真南(みなみ)さん(13)は、過去にピースをしたことがあったので「なんとなく反省した」そうです。

 「ピースは不謹慎」という意見が大半だった中、大谷さんは生徒に「なぜ悪いのか。どうすればいいのか。深く考えよう」と提起しました。吉岡さんは大谷さんと議論を重ねる中、ピースには楽しさや親しみだけでなく「平和を願う」意味があると知りました。

 吉岡さんは「楽しんでいるように見えるピースはよくない。でも平和への願いを人に伝える、という目的を持って行うピースは意味がある」と考えました。

 でも、原爆ドーム前でただピースをしても周囲には意図が分からない。そこで、メッセージを記した物を持ってピースをすることを提案しました。そんな自分の思いやアイデアを、吉岡さんは5回の書き直しを経て作文にまとめました。

 大谷さんは、生徒たちに吉岡さんの作文を紹介しました。すると、アイデアに共感した生徒から「実際にやってみたい」との声が上がったのです。そして12日、大谷さんの引率のもと20人が原爆ドーム前に向かいました。

 みんなは先月リニューアルした原爆資料館も見学。原爆がもたらした惨劇や、原爆ドームの歴史を改めて学びました。「ドームがあるこの場所で亡くなった人のことを考えながら、平和を願ってピースをした」と伴東小5年の古川綾乃さん(10)は語ります。

 戦争の歴史を習うだけではなく、平和を実現するために自分はどう考えるか、何ができるか―。行動することの大切さを実感する経験となりました。吉岡さんも「私たちのピースを多くの外国人観光客の方々が撮影していた。思いを受け取ってくれた人が、写真をインターネットで世界に広めてくれるといいな」と話してくれました。

(2019年5月19日朝刊掲載)

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