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社説・コラム

NGOドイツ国際平和村代表に聞く 紛争の傷 折り鶴で癒やす

広島初訪問 「復興に感動」

 紛争で心身に傷を負った子どもたちを受け入れて治療の機会を提供しているドイツ北西部のオーバーハウゼン市の非政府組織(NGO)「ドイツ国際平和村」のトーマス・ヤコブス代表(64)が広島市を初訪問した。平和村での活動や被爆地への思いを聞いた。(新山京子)

  ―平和村にはどのような子どもたちが滞在していますか。
 現在、アフガニスタンやアフリカのアンゴラなど8カ国から来た2~11歳の204人が暮らしている。貧困家庭の子や孤児であり、幼い頃から内戦や紛争が絶えない環境で育った影響から暴力的な性格の子も少なくない。しかし、同じ境遇で生きてきた他国の同世代と暮らすことで、徐々に優しい心を取り戻していく。

  ―子どもたちに必要なのは、病気やけがの治療だけではないのですね。
 私は平和村の運営に38年間携わりながら、子どもたちが、他者を尊重しながらともに生きることや、人間が平等の権利を持つことを学ぶ様子を見守ってきた。帰国した後に医師や教師となり、平和の担い手として活躍している子もいる。

  ―平和村での活動について教えてください。
 心に傷を負った子どもたちは、気持ちを落ち着かせるリハビリの一環で鶴を折っている。被爆後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんの生涯について、スタッフが絵本で教えている。今回、原爆慰霊碑に献花し、子どもたちの折り鶴もささげた。いつか平和村と広島の子どもの交流機会をつくりたい。

  ―今回の広島訪問を今後にどう生かしますか。
 被爆から74年後の復興した広島の町並みに感動し、原爆ドームの姿から核兵器の恐ろしさを痛感した。平和村のスタッフや子どもたちと、「広島で起きたことを二度と繰り返してはいけない」という思いをあらためて共有したい。

 平和村は日本を含めた各国の団体や個人からの寄付で運営し、3万人以上の子どもを支援してきた。平和村のボランティアスタッフを募り、スタディーツアーも企画している。広島と日本の人たちが関心を持ち、参加してくれるきっかけができれば幸いだ。

(2019年5月20日朝刊掲載)

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