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社説・コラム

[広島とアフリカ] 広島大教育開発国際協力研究センター長 吉田和浩さん

思い出すふわふわの餅

 サハラ以南のアフリカで私が最初に訪れたのは、ガーナでした。野口英世が活躍した国ですね。もう25年も前のこと、世界銀行に勤務していました。臼をひいて作るキャッサバ(芋の一種)とプランテーン(料理用バナナ)でできたふわふわのお餅を思い出します。

 ある時、地元の住民が学校改善に関わる仕組みを作るために、首都アクラから車で2日ほどかけて北西部に向かいました。乾燥した貧しい地域で、土壁に草ぶきの粗末な家々、土でできた独特のイスラム教礼拝場などが目を引きました。

 村に入るには、まず許可が必要です。広い中庭。大きな傘の下で長老がいすに座り、周りを重鎮が囲みます。通訳を介して訪問の理由をじっくり説明し、やっと許可が出ました。

 土産にプランテーンを山ほどもらいました。さらには生きた羊も。先の道中もあるので羊は何とか辞退しましたが、来訪者への土産は権威の大きさを表しているようでした。

 当時は学校施設が貧弱で教室も足りず、簡単な木のベンチを使った青空教室もよく見かけました。先生の無断欠席もよくありました!

 その後、石油が出るようになって、ガーナは急速に成長しています。あの村の様子もだいぶ変わったことでしょう。

 エチオピア、ケニア、セネガル、タンザニア、マラウイ、ザンビア、南アフリカなど、これまでに12カ国を訪れましたが、どこも魅力に満ちています。みなさんにもぜひ、自然と野生と活気に満ちたアフリカを体験してほしいと思います。

 私が学生指導をしている広島大大学院国際協力研究科では、アフリカからの留学生も多く学んでいます。キャンパス内で直接話してみてください。きっとすてきな発見がありますよ。

よしだ・かずひろ
 長野県小布施町出身。サセックス大大学院修了。商社勤務などを経て世界銀行、国際協力銀行にて人間開発などに携わる。2013年から現職。アフリカ諸国への教育支援、開発に取り組んできた。

(2019年5月27日中国新聞セレクト掲載)

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