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元住民に聞く「あの頃」 平和記念公園で福山工業高 被爆前の広島をVRに

 被爆前の広島の爆心地付近をバーチャルリアリティー(VR)で再現している福山工業高(福山市)計算技術研究部の部員37人が、広島市中区の平和記念公園を訪れた。本年度のVR制作に生かすため、旧中島地区の元住民の話を聞いた。

 VRはゴーグル型の装置を着けると、コンピューターグラフィックス(CG)で360度の仮想空間を体験できる。同部は本年度、旧中島本町のVRを制作する予定で、同町南隣の旧材木町に住んでいた今中圭介さん(83)=安佐南区=から当時の様子を聞き取った。

 今中さんは、中島地区が市内随一の繁華街だったことや、幼い頃に元安橋から川に飛び込んだり、姉と一緒に映画館に行ったりした思い出を話した。

 1945年春に家族で八木村(現安佐南区)に疎開した後、原爆により一帯は焦土と化した。市内の銀行に出勤した姉は戻らず、捜し回った父も下血などの症状で亡くなった。今中さんは「ここがもともと公園だったと思っている人もいるが、そうではなかったと知ってほしい」と訴えた。

 同部は2020年の完成を目指し、16年から爆心地半径300メートルのエリアのVR制作を開始。これまでに爆心直下の旧細工町(現中区)などを再現した。3年の松浦七海王(なみお)部長(17)は「ここに暮らしがあったと実感してもらえるような、質の高いVRを作りたい」と気持ちを新たにしていた。(明知隼二)

(2019年5月28日朝刊掲載)

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