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「地元理解が大前提」 地上イージス配備調査で阿武町長 知事・萩市長と温度差

 「配備は地元理解が大前提。理解とは『賛同します』ということだ」。防衛省がイージス・アショア配備候補地の調査で「安全に配備できる」との結論を山口県庁で伝えた28日、阿武町の花田憲彦町長は原田憲治副大臣に詰め寄った。強い口調には「住民理解がないままの配備は認めない」との思いがにじむ。一方で村岡嗣政知事や萩市の藤道健二市長は具体的な態度を示さず、地元が一枚岩でない状況が浮かんだ。(門脇正樹)

 同町では既に有権者の過半数が配備計画に反対の意思を表明。花田町長も「町の移住・定住策に逆行する」として24日、同省に出向き、原田副大臣に計画の撤回を直談判したばかり。

 だが、この日は候補地である陸上自衛隊むつみ演習場(萩市)の立体模型を使った電波環境や水源の調査報告にとどまり、花田町長は「再三にわたり回答を求めたIターン、Uターンへの影響についての考察がない」と不快感をあらわに。さらに「国が住民説明会を開く際には過半数が反対する状況を認識した上で臨むべきだ」と警告した。

 明確に計画反対を訴える花田町長に対し、村岡知事はこの日も煮え切らない態度に終始。終了後、「われわれが求めてきたことに具体的で客観的なデータが示された」と評価する一方、「説明資料は100ページを超える。まずは内容をしっかり確認する必要がある」と是非の評価は避けた。藤道市長も「現時点で住民の理解が進んだと言える状況にはない」としつつも賛否の判断時期は「短時間で結論付けるような軽い問題ではない」とした。

 同省は6月6日から萩市と阿武町で住民説明会を開く。原田副大臣は「地元の理解を得ないまま強硬に工事を進めたり、配備先として決定したりすることはない。不安と懸念を払拭(ふっしょく)するため丁寧な説明を尽くす」と繰り返した。

<イージス・アショアを巡る主な動き>

2018年6月1日 国が山口、秋田両県知事と地元首長に配備候補地と説明
       8日 山口県などが国へ質問状を送付(1回目)
      22日 防衛相が山口、秋田両県を訪問し配備計画を説明
    7月18日 山口県などが国へ質問状を送付(2回目)
      25日 阿武町長が防衛省を訪れ配備先の再検討を要請
    9月12日 山口県などが国へ質問状を送付(3回目)
      20日 阿武町長が配備計画の反対を表明
   10月29日 むつみ演習場で国の適地調査を開始
2019年5月24日 阿武町長が防衛省を訪れ配備計画の撤回を要請
   27、28日 国が山口、秋田両県知事と地元首長に「安全に配備・運用でき           る」とする調査結果を報告

【解説】「結論ありき」疑念強く

 防衛省が山口、秋田両県でイージス・アショアの配備を進める意向をあらためて示した。半年間の適地調査を経て検討した結果とするが、内容は国の従来の説明を補強するものばかりで「結論ありき」との疑念が強まる。

 国はこれまで「仮に不適との結論に至れば配備しない」と明言。だが、調査結果をみると、国に不都合な内容はみられない。本当に配備先を見直す考えはあったのか。「配備は既定路線」との批判をかわすための方便とみる地元関係者は多い。

 今回の調査結果に「適地」との表現はなく、原田憲治副大臣も「これで配備先の決定ではない」と強調する。一方、電磁波を吸収する壁の設置や警備強化など配備を前提とした安全対策は事細かに列挙している。適地かどうかを判断する調査というよりも地元住民を説得するための資料作りとの印象が強い。

 国は「配備には地元理解が大前提」とする。ただ、何を持って理解を得られたと判断するのか、この日も具体的な説明はなかった。すでに阿武町は配備反対を表明している。山口県や萩市も住民目線に立った国への意思表示をすべき時期に来ている。(和多正憲)

(2019年5月29日朝刊掲載)

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