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被爆クスノキ 枯死から救え 広島市事業 土壌改良 樹木医が「治療」

 原爆に耐え、広島市中区基町で生き続けてきたクスノキを枯死の危機から救う「治療」が15日、始まった。被爆樹木の保存に取り組む市の事業で、樹木医が17日まで作業する。市は「原爆の悲惨さを伝える被爆樹木に関心を持ってほしい」と、16日の作業を公開する。(田中美千子)

 クスノキは爆心地から1キロ余り、広島城の北東のお堀端にある。樹齢100年以上で高さは約12メートル。幹回り約2・6メートルの幹の一部に焼けた跡が残る。原爆で近くの陸軍幼年学校が燃えた影響とみられる。根の衰弱により栄養が行き渡らないで起きる「枝枯れ」が目立つ。

 15日は、財団法人日本緑化センター(東京)が認定する「樹木医」の堀口力さん(67)=西区=と造園職人5人が、根元の土を掘り返した。木が元気を取り戻すには、土を適度に軟らかくして水分や栄養分を取り込みやすくする必要がある。追って肥料も混ぜる。土壌改良は2004年にもしている。

 米国の原爆投下から68年。被爆樹木の衰えが進む。堀口さんは地面が舗装されたり、人に踏まれたりして根の成長を阻まれる影響を指摘。「都市化で厳しい環境になっている」と語る。「草木も生えないとされた焦土で市民に生きる希望と勇気をくれた被爆樹木。大切に見守る必要がある」と力を込める。

 16日の一般公開は午前10~11時。堀口さんが治療の解説をする。雨天中止。市平和推進課Tel082(242)7831。

被爆樹木
 広島市が1996年度に登録を始めた。爆心地から半径約2キロ以内で、1945年8月6日の原爆投下より前からあった樹木が対象。市民が立ち入りできない個人宅を除く。現在、公園や寺など55カ所にイチョウ、エノキなど約30種類約170本ある。市は2001年度から、衰えが目立つ被爆樹木の樹勢回復事業を続けている。

(2013年3月16日朝刊掲載)

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