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原爆の子の像 制作時の素描 遺族 広島市立大に寄贈

彫刻家菊池一雄氏が描いた8点

 広島市中区の平和記念公園にある「原爆の子の像」制作時の素描8点が見つかった。像の制作者の彫刻家菊池一雄氏(1908~85年)によるもの。東京在住の遺族が3月、菊池氏の彫刻作品を所蔵している広島市立大芸術資料館(安佐南区)に「ゆかりのある広島で活用してほしい」と寄贈した。31日に始まる同館の「新収蔵作品展」で展示する。6月16日まで。

 素描は折り鶴をささげ持つ少女のブロンズ像と台座の高さを少しずつ変え、ドーム型の台の形が異なる3案のほか、周辺に段差を設けて強調させたデザインもある。いずれもトレーシングペーパーやスケッチブックにペンや鉛筆で描いた。原爆の子の像の下に置かれた石碑の銘板のデザイン画もある。

 菊池氏は当時、東京芸術大の教授で、戦後の具像彫刻を代表する作家の一人。原爆で犠牲になった子どもたちの象徴として、試行錯誤しながら制作した背景がうかがえる。

 原爆の子の像は、被爆から10年後の12歳の時に白血病で亡くなった佐々木禎子さんの級友たちが建立を計画。国内外からの募金で1958年5月5日に完成した。同館の菊田恵学芸員は「広島の復興や市民の平和への願いを表現した像の歴史が分かる資料として多くの人に見てもらいたい」と話している。(新山京子)

(2019年5月30日朝刊掲載)

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