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放影研の移転「可能」 広島市提案の市総合健康センター 費用61億円 検討具体化へ

 日米両政府が共同運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)の移転問題で、放影研が2018年度に実施した関連調査の報告書の詳細が24日、分かった。市が移転先候補に提案している市総合健康センター(中区)を大型機器の設置に必要な面積などに照らして「移転可能」と判断。費用は計約61億円と積算した。放影研は同センターを候補の一つに移転検討を具体化させる方針で、日米両政府が費用負担に合意できるかも焦点となる。(水川恭輔)

 調査は日本政府が18年度当初予算に関連費用を計上し、放影研が研究施設の移転支援などを専門とする島津理化(東京)に委託して実施した。同センターが移転先に必要な条件を満たすかどうか、ほかの候補物件の有無などを調べた。

 報告書は、築約70年の現施設の老朽化を挙げ「移転するか、解体・新築するべきだ」と指摘。「数年後の移転」ができ、被爆者の血液などを一括管理する大型保冷庫の設置場所やセキュリティーなど七つの基準を満たす物件を探したところ、センターはクリアしたが、ほかに調べた複数の施設は満たさなかったとした。

 その上で、センターへの移転を想定して、費用を試算。センター改修工事は約41億4千万円、移転物品機器調整・運搬約9億5千万円などと概算し、現施設の解体などと合わせると、計約61億円と積算した。

 放影研は、現在の機能の移転を扱った今回の報告書と、並行して策定を進める将来の研究構想を照らし、追加で必要な機器の有無などの検討を経て、移転について最終判断する方針。放影研によると、20、21日に米国で開かれた評議員会でも評議員から移転の検討の具体化を求められた。

 放影研を巡っては、前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)が1950年に比治山公園に移った経緯を、市が「反対したが、占領下で強行された」と長年、問題視。広島の被爆者団体も移転を求め、被爆地の戦後まちづくりの最大の懸案の一つとなってきた。

 一方で研究の意義を評価する市は16年、費用面から「新設は困難」とする日本政府の意向を踏まえてセンター入居案を示した。市は移転が実現した場合の跡地を含め、比治山公園一帯を「平和の丘」として再整備する構想を掲げている。放影研は近く調査結果を市に説明する方針。

放射線影響研究所(放影研)
 原爆放射線の長期的な影響を調査するため、1947年に設立された原爆傷害調査委員会(ABCC)が前身。その後、広島、長崎を拠点に約12万人を対象に調査を開始。75年に放影研に改組し、日米両政府が共同出資で運営する。被爆者のがん発生率やがんによる死亡率と放射線量との関連などを調査。被爆2世、胎内被爆者に関する研究も続けている。

(2019年6月25日朝刊掲載)

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