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被爆者高梨さんの俳句 米神父が訳本に 5月にも出版

■記者 桑島美帆

 米カリフォルニア州のエリック・フリード神父(51)が、広島で被爆した高梨曠子(ひろこ)さん(79)=東京都町田市=が詠んだ俳句を英訳し、「被爆体験を俳句に」を執筆した。広島のカトリック信徒たちが出版準備を進めている。

 「まなうらにあの日の修羅や平和祭」-。広島市立第一高等女学校(市女)4年生だった高梨さんは横川駅前(現西区)で被爆。結婚を機に上京して広島を離れ、「遺体を踏んでも何とも思わなかった」壮絶な記憶を封印してきた。しかし、被爆50年を区切りに自らの被爆体験と向き合い、11句を詠んだ。

 フリード神父は友人を介して2002年夏、高梨さんに出会った。「美しい日本語の詩に被爆者の思いが凝縮され、米国人の心に響く」と俳句の英訳を決意。高梨さんの案内で被爆地を歩き、句に登場する言葉の解説、多数の生徒が原爆の犠牲になった市女の沿革、高梨さんの思いにも触れながらまとめた。

 出版は、ノートルダム修道女会の渡辺愛子さん(69)=広島市西区=が昨年夏、米国でフリード神父と出会ったのがきっかけ。カトリック広島司教区の肥塚(こえづか)神父(68)らが賛同し、このほど広島を訪れたフリード神父や高梨さんと協議しながら準備している。5月にも1000部を発行し無料で配る計画。広島のカトリック信徒らの募金で費用を賄う。

(2009年3月25日朝刊掲載)

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