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「敵国」の犠牲者 悼み学ぶ 被爆者の森さん交え 広島の教専寺で27日 

企画の僧侶たち「すべての命に思い巡らせる」

 第2次世界大戦末期に広島で死亡した米兵捕虜について研究する被爆者の森重昭さん(82)=広島市西区=らを交え、歴史をひもとく集会が27日に被爆建物の教専寺(同区草津本町)本堂である。「敵国」の犠牲者にも光を当てながら戦争の無残さと平和な未来を考えよう、と浄土真宗本願寺派の僧侶たちが「追悼法要」として主催。米兵の遺族も感謝の声を寄せている。(金崎由美)

 1945年7月28日、呉沖に飛来した米軍機20機余りが、旧日本軍の戦艦「榛名(はるな)」などを攻撃中に被弾し墜落した。このうち、B24爆撃機タロア号は現在の広島ゴルフ倶楽部(くらぶ)鈴が峰コース(佐伯区)で大破し乗員11人のうち8人が死亡。ロンサムレディー号は現在の柳井市伊陸に墜落した。生還者は捕虜として広島市内の軍施設に収容され、計12人が被爆死したという。

 この歴史の掘り起こしや遺族との交流を続ける森さんを招こうと、広島・廿日市両市内の22寺からなる安芸教区佐伯東組が被爆74年の平和行事を企画した。追悼法要に続き、森さんの活動を追った米国映画「ペーパー・ランタン(灯籠流し)」の上映や、タロア号の墜落を目撃した住民との座談会もある。森さんは「敵味方問わず戦争がもたらす痛みを考える機会になってほしい」と期待している。

 映画上映などに加えて追悼法要も行うのは、今年に入り米テキサス州に住むマイケル・フラナギンさん(46)から森さんに突然連絡があったことがきっかけだ。タロア号が被弾した時パラシュートで脱出し、教専寺に近い草津地区の海岸に着水したものの息絶えたルドルフ・フラナギン中尉はマイケルさんにとって祖父の弟に当たる。

 教専寺の前住職、故選(こせん)一法さん(80)は「歴史を知るだけでなく、戦争で失われたすべての命と、家族の悲しみに思いを巡らせたい」と力を込める。広島二中(現・観音高)1年だった兄浩行さんを原爆で失った。今回、亡き兄に代わり守ってきた寺で米兵を追悼することに特別な意義を感じている。

 マイケルさんは「来日して参加することはかなわないが、ぜひ感謝の気持ちをメッセージにしたい」と話しており、ルドルフさんの死を家族が嘆き悲しんだことなど、祖父から聞かされた話をつづって送り届ける予定だ。

 会場では、頭と尾の両方を折り込んだ折り鶴を参加者に作ってもらう。浄土にすむという双頭の鳥「共命鳥(ぐみょうちょう)」になぞらえ、「人は互いにつながっており、対立を超えて共存しなければならない」という教えを皆で胸に刻みたいという。

 午後1時半~4時。事前申し込みは受け付けておらず、当日用意する120席の範囲で参加を受け入れる。

(2019年7月23日朝刊掲載)

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