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被爆者団体88%求める 平和宣言で核禁止条約署名要請 本社アンケート

解散・統合 10%が予定

 全国各地の被爆者団体の約9割が、8月6日の広島市の平和記念式典で読み上げられる平和宣言で核兵器禁止条約の署名・批准を日本政府に求めるよう望んでいることが23日、中国新聞社のアンケートで分かった。国連で同条約が採択された2017年7月以降、2回の平和宣言で政府へ直接的に要請しなかった松井一実市長に対し、強いメッセージの発信を求める被爆者の思いを裏付けた。(石川昌義)

 アンケートは各都道府県と中国地方各地の計109団体を対象に活動状況などを尋ね、90・8%に当たる99団体から回答を得た。「平和宣言で政府が同条約に参加するよう求めるべきだと思うか」との問いに、88団体(88・9%)が「思う」と答えた。

 理由で、広島県被団協(坪井直理事長)は「世界が注目する宣言で条約参加を求めないことは理解に苦しむ」と強調。豊平原爆被爆者の会(同県北広島町)は「被爆地広島の市長として、もっと踏み込んでほしい」と求めた。

 「思わない」としたのは8団体(8・1%)。「核拡散防止条約(NPT)体制と同条約は両立しない」(下松市原爆被害者の会)と核兵器廃絶を巡る国際情勢の厳しさを指摘する声や、「宣言に政治的要素を含めるべきではない」(富山県被爆者協議会)などの意見があった。残る3団体(3・0%)は無回答。

 松井市長はこれまでの宣言で、政府に対する個別政策の注文・批判より「被爆者の体験、平和への思い」の発信を重視する姿勢を堅持。今年は被爆者団体などの声を踏まえ、「被爆者の思い」として同条約の署名・批准を求める内容の文言を盛り込む方向で最終調整しているとみられる。

 厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ被爆者は3月末時点で14万5844人と、初めて15万人を下回った。平均年齢は82・65歳。アンケートでは、自らの組織の今後について10団体(10・1%)が「解散や統合の予定がある」と答えた。うち向原町原爆被害者の会(安芸高田市)は20年8月に解散する方針。岡山県原爆被爆者会新見支部(新見市)は3年後に解散するとした。

 中国新聞社が全国の被爆者団体にアンケートするのは被爆70年の15年以降、4回目。15年に125団体だった対象団体はその後、解散などが相次ぎ、今回は109団体となった。

 ≪調査の方法≫6月中旬から7月中旬にかけて質問文書を送付。返信された後、電話で各担当者から聞き取った。送付先は、日本被団協を構成する都道府県組織41団体とオブザーバー参加の広島県被団協(佐久間邦彦理事長)、県単位での活動がない山形県で日本被団協と連絡を取り合う鶴岡市の「つるおか被爆者の会」、中国地方5県の各県組織が把握する支部や地域の会など66団体の計109団体。99団体から回答を得た。

核兵器禁止条約
 核兵器の開発、保有、使用、使用の威嚇などを全面的に禁止する初の国際条約。50カ国が批准の手続きを終えた90日後に発効する。非核保有国が主導し、2017年7月に国連で122カ国・地域の賛成で採択した。現在、23カ国・地域が批准手続きを終えているが、核兵器保有国は署名・批准していない。日本政府は段階的な核軍縮を主張する米国と歩調を合わせ、署名・批准しない方針を示している。

(2019年7月24日朝刊掲載)

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