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核軍縮議論の継続提案 賢人会議 外相も前向き姿勢

 核兵器保有国と非保有国の有識者が核軍縮の方策を議論する外務省の「賢人会議」の最終回となる第5回会合が23日、東京都内で、2日間の日程を終えた。今後は有識者に各国の政府関係者などを交えた形で議論を続ける案が示され、河野太郎外相は同日の定例記者会見で、提案に前向きな姿勢を示した。

 討議は非公開。座長の白石隆・熊本県立大理事長が終了後に会見した。核兵器を廃絶した場合の安全保障の在り方、核兵器使用と国際人道法の関係といった核軍縮を巡る「困難な問題」を主なテーマに議論。サイバー攻撃、ミサイル防衛網を突破できるとされる「極超音速兵器」など新たな技術の影響も検討した。

 白石座長は「すぐに一致点を見いだせる問題ではない」とする一方、5回の議論で「核軍縮を実質的に進めるための取り組みについて一定の方向性は示せた」と説明した。これまでの議論を座長総括としてまとめ、9月をめどに外務省に提出するとした。

 白石座長は、会議の成果を実際の政策に反映するため、各国の政府関係者を交えた会議を新たに設置するよう国に提案。河野外相は会見で「立場の違いを超えて対話を続けることに意味がある。できればさらに議論を深めたい」と、前向きに検討する姿勢を示した。

 賢人会議は2017年に広島市で第1回会合を開催。18年は核戦力の透明性の向上など28項目の提言を、19年には核拡散防止条約(NPT)など核軍縮の枠組みの堅持を求める「京都アピール」をまとめた。(明知隼二)

具体的な行動 合意に難しさ 議論は深まる

 外務省の「賢人会議」が最後の会合を終えた。会見した委員14人は、核兵器保有国と非保有国の違いを超えた議論の深まりを評価した。一方、具体的な取り組みで合意する難しさがあったとの指摘や、各国政府に実効性ある働き掛けが必要との意見もあった。

 賢人会議は核兵器保有国の米ロや、核軍縮を求めるニュージーランドなど10カ国の元外交官や専門家17人が委員を務めた。白石隆座長は「異なる立場の委員の間で信頼が生まれたことが成果だ」と意義を強調。広島平和文化センター前理事長の小溝泰義委員も「長期的には核抑止は危険という認識など、共通点も多く見いだせている」とした。

 一方、保有国フランスのブルーノ・テルトレ委員は「核保有は生き残るための投資。直ちに手放す理由はない」とした。核兵器禁止条約についても踏み込んだやり取りはされず、白石座長は「重要性は分かっているが、原則論で議論すると積み重ねた信頼が崩れかねない」と説明した。

 ドイツのアンゲラ・ケイン委員は「いかに実際に各国に影響を与えるかだ」とし、会議の提言が具体的な行動につながるよう各国政府を交えた新たな議論の場を求めた。

(2019年7月24日朝刊掲載)

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