×

ニュース

被爆前後VR制作進む 福山工高 来夏に1キロ圏内完成

元安川遊びも再現

 福山工業高(福山市)の計算技術研究部が、被爆前後の広島を再現するバーチャルリアリティー(VR)の制作作業を続けている。現時点で、広島県産業奨励館(原爆ドーム、広島市中区)とその周りの旧猿楽町や旧細工町の部分ができた。被爆75年の来夏までには平和記念公園にかつてあった旧中島本町のVRも作り、爆心地から約1キロ圏内の仮想空間が完成する。(高本友子)

 旧細工町は爆心直下の島病院(現島内科医院)、猿楽町は現在の原爆ドームやおりづるタワーを含むエリア。生徒たちは、写真資料や被爆者の証言、手記を基に映像を制作。建材の木目の色使いや看板のさびまで繊細に描き込んでおり、一つの建物に約1カ月かけている。

 ゴーグル型の装置を身につけ、この一帯を「歩く」ような体験ができる。「元安川を泳いで遊んだ」という被爆者の証言が多いため、川の中に入る映像も作った。県産業奨励館の中で、窓越しに町並みを眺めることもできる。映像が、被爆前の風景から暗闇と炎に包まれた被爆直後に切り替わった瞬間、見る者に強い衝撃を与える。

 VR制作は2016年に開始。生徒たちはそれ以前から爆心地付近のコンピューターグラフィックス(CG)も作っており、最新技術を駆使した被爆者の記憶の保存に取り組んでいる。部の顧問を務める長谷川勝志教諭は、「これは被爆者からバトンを受ける取り組み。多くの人に、VRの町並みに入り込んで失われた生活を想像してもらいたい」と話している。

(2019年7月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ