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「原爆ドーム」再び不調 工事入札 人手不足響く

 広島市が世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)の保存工事で実施した入札が、再び不調に終わっていたことが31日、分かった。本年度内を予定していた工事完了は2020年度にずれ込む見通しとなった。建設業界の全国的な人手不足に加え、長年補修を担ってきた大手ゼネコンの指名停止も影響しているとみられる。

 保存工事は、鋼材の塗り替えや壁のれんが目地の補修、窓部分の柱の補修などで、工期は8カ月。市はことし2月の指名競争入札が不調となったのを受け、6月中旬に2度目を実施した。史跡や重要文化財などの補修実績がある11業者が対象だったが、すべて辞退した。

 市営繕課によると、補修工事は技術的に難しく、複数の業者が意欲を示したものの、最終的には「必要な技術者を用意できない」として辞退したという。

 また、過去の全4回の保存工事を担い、ノウハウを持つ大手ゼネコンの清水建設(東京)の不参加も影響しているとみられる。市はリニア中央新幹線に関わる談合事件などで、19年9月25日まで同社を指名停止としている。

 市は18年度当初予算に工事費5800万円を計上。当初は同年度内に着工し、完了は19年10月を予定していた。小型無人機ドローンの高精度カメラで、補修後のドームの形や色彩を記録する本年度の事業も遅れる。

 市は秋ごろに3度目の入札を検討している。公園整備課は「来年の8月6日までには完了させたい」としている。(明知隼二)

原爆ドームの保存
 1915年に広島県物産陳列館として完成し、33年に県産業奨励館に改称。45年に被爆し、96年に世界遺産登録された。市は67年、内部から壁を支える鉄骨の設置、補強のための樹脂注入など初の保存工事を実施。89、2002、15年と工事を重ねた。工法は専門家による保存技術指導委員会で検討。5回目の工事は、鋼材のさびを化学処理してから塗装するなどの工法について、18年9月の委員会で合意している。

(2019年8月1日朝刊掲載)

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