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一人一人の悲劇伝えて 被爆者の作家大野さん 皆実高生らに語る

 原爆の日を前に、広島市南区の皆実高と段原中の生徒が31日、同高前身の県立広島第一高等女学校(第一県女)の卒業生で被爆者の児童文学作家大野允(みつ)子さん(87)=安佐南区=を招いた学習会を南区の段原公民館で開いた。大野さんは被爆体験を語り、被爆死した一人一人の悲劇を語り継ぐ大切さを訴えた。

 住民を含めて約80人が参加。皆実高の生徒会メンバーが、被爆死した第一県女1年生の姿を描いた著作「夏服の少女たち」を基にしたアニメを上映し、大野さんにインタビューした。あの日、1年生約220人は現在の中区土橋町付近で建物疎開作業中に被爆死。2年生だった大野さんは現在の安佐南区川内の工場に動員され無事だったが、8日に校舎の片付けに向かって入市被爆した。

 大野さんは女子生徒の様子を「いつ死ぬか分からない悲(ひ)愴(そう)感はなかった。今と同じような女の子が生き、訳も分からず死んでいった」と証言。白い花柄のワンピースを母親に縫ってもらった思い出を語り「髪留めをしたり、もんぺのヒップをちょっと絞ったり。精いっぱいのおしゃれをする人もいた」と振り返った。

 1年6組の生徒日誌を75年に入手したことをきっかけに遺族を訪ね、作品にした。「どうして亡くなったのか。生きた者として考えたかった」と語った。

 司会を務めた皆実高1年の棚田優香さん(16)は「大野さんの『亡くなった一人一人に8月6日のドラマがある』との言葉が心に残った。今後も平和学習に関わりたい」と話していた。学習会は地域団体などが主催。生徒計25人が運営を担った。(永山啓一)

(2019年8月1日朝刊掲載)

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