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原爆資料館長に志賀氏 広島市3137人異動 初の被爆2世

 広島市は27日、4月1日付の人事異動を発表した。総数は3137人で、前年に比べ309人少ない。生活保護受給者の就労を進めるため、経済観光局に雇用推進担当部長のポストを設け、厚生労働省からの出向官僚を充てる。原爆資料館(中区)の第12代館長に志賀賢治人事委員会事務局長が就く。被爆2世で初の就任となる。

 志賀氏は今月末に任期切れで退く前田耕一郎館長の後任。市を定年退職し、資料館を管理運営する広島平和文化センターに再雇用される。松井一実市長は記者会見で、被爆者援護策を担う健康福祉局長を2010年度に務めた志賀氏の経歴を踏まえ、「被爆の実相を伝える資料館の機能を強化してもらいたい」と述べた。

 局長級は半数近い15人が対象で、うち9人が昇任。平和行政を担う市民局長に及川享財政局次長を登用する。(岡田浩平)

 
この人 第12代原爆資料館長に就任する 志賀賢治さん

被爆2世「大きな使命」

 幼い頃、被爆者の祖母にかわいがられた。その背中に、胸に、皮膚がひどく焼かれた痕があった。「これが原爆か」。子ども心に刻まれた。「今の若い人たちにも原爆資料館の資料と向き合い、あの日の記憶を引き継いでほしい。そのために、自分に何ができるか、思案を重ねている」

 原爆資料館長といえば、国内外の来賓も案内する「ヒロシマ」の顔。広島市の人事異動で第12代館長に就く。祖母だけでなく、84歳の母も爆心地から約3キロの南区の路上で被爆した。被爆2世の館長就任は初めてだ。

 「大きな使命を負った、と感じる」。戸惑いを口にしつつも、自分のキャリアを生かす道も模索し始めた。その一つが、広島市立大事務局長を務めた経験だ。「資料館の使命の一つが調査研究。大学と組織的に連携し、学生を巻き込みたい」

 被爆者の高齢化にはあらがえない。だからこそ若者が収蔵資料に接する機会を増やしたい、という。

 市の情報システム課でIT環境整備や職員のパソコン研修に携わった経験もある。「国内外を問わず平和関係の博物館や研究機関とつながり、情報共有することも考えてみたい」。松井一実市長も「情報技術に精通している」とヒロシマの発信力強化に期待する。

 実は趣味の一つが博物館巡り。昨年から学芸員資格を取るため通信教育を受けている。「資料館でも、収蔵資料と虚心に向き合うつもりです」。娘2人は独立し、広島市西区で妻と愛犬1匹と暮らす。(田中美千子)

(2013年3月28日朝刊掲載)

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