×

ニュース

核禁条約 政府に批准要求 被爆者の思い受け止めて 平和宣言 広島市、骨子発表

 広島市の松井一実市長は1日の記者会見で、被爆74年の原爆の日に平和記念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。2017年に国連で採択された核兵器禁止条約について、被爆者の思いを通じて日本政府に署名・批准を求める。冒頭では国際的な緊張関係が高まり、核兵器廃絶の動きが停滞している世界の現状への懸念を強調。国際的な協調体制の構築を促す。

 宣言は冒頭部分で現在の国際情勢について言及。冷戦終結を後押しし、核軍縮の流れをつくった米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約が2日に失効する見通しであることなどを念頭に、核兵器廃絶を目指す動きの停滞に懸念を示す。

 国家間の対立的な動きが広がる中で、インドの独立に貢献したガンジーが言及した「寛容」の心の大切さも指摘。核開発競争が激化した1980年代、米ソ両国のトップがINF廃棄条約の調印に向けて動いたように、対話による国際的な協調体制を築くよう世界のリーダーに訴える。

 日本政府には、「核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思い」をしっかりと受け止めるよう呼び掛け、核兵器のない世界の実現へ強いリーダーシップを求める。

 宣言を巡っては7月上旬、二つの県被団協など被爆者6団体が、日本を含む世界各国の政府・政治指導者に対して条約の署名・批准を明確に求めるよう松井市長に要請していた。

 このほか、被爆の実態を当事者の印象的な言葉で伝えようと、被爆者の短歌を初めて盛り込む。当時5歳だった村山季美枝さん(79)=東京都文京区=の原爆投下直後の惨状を詠んだ一首を選んだ。

 松井市長は「世界の人々、特に為政者に相互不信や疑心暗鬼から抜け出すための理念の転換を促したい」と述べた。(永山啓一)

(2019年8月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ