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禎子さん紙芝居20年 府中町の中村さん原爆の日に上演 今年は町内全中高から参加

 紙芝居を通して平和の大切さを訴えている府中町の中村由利江さん(68)が、広島原爆の日に平和記念公園(広島市中区)にある原爆の子の像のそばで佐々木禎子さんを描いた紙芝居を上演し続け、今年で20年目になる。一人で始めた活動には町内の多くの中高生が加わるようになった。「命の尊さや平和を考える機会をつくるためにも、引き継いでいってほしい」と願う。(鴻池尚)

 中村さんは2000年から毎年8月6日に、被爆して12歳で亡くなった禎子さんの生涯と像の建立を物語にした「原爆の子さだ子の願い」を上演している。禎子さんの供養が目的で始めたが、予想を超す多くの聴衆が集まるようになった。

 外国人の姿も多く02年から町国際交流協会会長の小柴浩美さん(59)の協力を得て英語でも披露してきた。中村さんは「関心の高さに驚いた。生きたいと願った禎子さんの物語を伝え続けたいと感じた」と振り返る。

 町内の生徒の参加は11年から。中村さんの要請に府中緑ケ丘中の生徒が応え、15年から安芸府中高、今年から府中中が加わり町内全中高に広がった。中村さんは「自分の年齢を考えるといつまで続けられるか不安だった。禎子さんと年代の近い多くの若者がいてくれてうれしい」と話す。

 今年は合わせて20人余りが日本語版と英語版を交互に上演する。生徒は7月に府中緑ケ丘中で合同練習を重ねた。中村さんや小柴さんが見守る中、せりふを熱心に読み返した。同中2年の日山愛梨さん(14)は「同じくらいの年で亡くなった人たちのことを忘れてはいけない」。安芸府中高1年の山本志遠さん(16)は「原爆の残酷さを知る人が年々減っている。僕たちが伝えていかなければ」と誓う。

 6日は午前8時15分に像の前で黙とうした後、正午すぎまで生徒が上演。中村さんは夕方から午後7時すぎまで担当する予定だ。

(2019年8月3日朝刊掲載)

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