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互いの仏性尊重し共生を 天台宗比叡山延暦寺の小堀執行 原爆犠牲者追悼 広島法要15年目

 天台宗の平和祈念法要が、平和記念公園(広島市中区)の原爆供養塔前であり、原爆犠牲者を追悼し、世界平和を祈願した。僧侶や檀(だん)信徒約120人が参列し、般若心経や御詠歌を唱えた。中四国の天台宗寺院を所管する岡山、山陰、四国の3教区が主催し15年目。導師を務めた総本山・比叡山延暦寺(大津市)の小堀光實執行(しぎょう)(65)に平和への思いを聞いた。

  ―法要の意義を教えてください。
 天台宗独自で平和を祈念するお勤めを「開宗1200年慶讃(けいさん)大法会」に合わせて2005年に始めた。毎年「比叡山から発信する言葉」を選ぶ。今年の「照続永劫(しょうぞくえいごう)」(永劫に照らし続ける)の通り、広島で営み続けたい。

  ―世界では宗教や民族の対立を背景にした紛争が絶えません。
 比叡山には「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」という教えが伝わる。つまり人間だけでなく動物、植物など万物は仏様となる素質が備わり、尊厳を有している。戦争やテロ、暴力といった対立する問題も互いの仏性を尊重するという考え方が必要ではないか。共生の道を探りたい。

  ―平和を実現するために宗教の果たすべき役割は何ですか。
 比叡山では毎年、宗教サミットを開き国内外の宗教者が平和について意見を交わす。宗教、宗派を超えて対話を重ね、相互理解に努めている。自己だけでなく他者のためを考える。そこから平和や環境問題を解決する一歩が踏み出せる。

 平和を希求する延暦寺の務めはどの時代も変わらない。天台宗を開いた伝教大師(でんぎょうだいし)(最澄)が示した「一隅を照らす」「忘己利他」という教えの意義を幅広い世代に発信し、皆が心を寄せ合える時代にしなければならない。伝教大師の思いに心をはせ、平和で明るい世の中を築きたい。(久行大輝)

(2019年8月5日朝刊掲載)

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