×

ニュース

運転39年の島根1号機 「40年で廃炉」不透明

来月 延長基準案 再稼働へ高いハードル

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の1号機は29日、運転開始から丸39年を迎えた。国が原発の運転期間の原則とする40年まであと1年に迫った。国は40年を超える運転に必要な安全基準を4月に示す予定で、「40年で廃炉」となるかどうか、現段階では見通せない。(樋口浩二)

 1号機は、全国の商業炉50基(福島第1原発1~4号機を除く)では4番目に古い。定期点検などのため停止期間は約3年に上り、50基では最長となっている。

 40年を超える運転には、原子力規制委員会が4月に案を示す運転延長のための安全基準を満たす必要がある。2月に骨子案が示された全原発が対象の基準は、稼働の最低条件との位置付けで、4月の基準案では追加の対策が求められる見込みだ。

 これに対し、中電は「規制委の基準に従って再稼働を目指す。廃炉の考えはない」とする。40年を超える運転に規制委が必要とする原子炉の技術評価についても、7月の安全基準公表を受け、提出するという。

 ただ、稼働へのハードルは高いのも事実だ。規制委が、全原発を対象とする安全基準骨子案に盛り込んだフィルター付きベント設備の設置は、1号機では未着手。原子炉格納容器の放射性物質を除き蒸気を放出する設備で、島根など福島第1と同じ沸騰水型の原発では規制委が「稼働の必須条件」と位置付ける。

 中電の苅田知英社長は28日の記者会見で「規制委の(延長)基準を把握しないと判断できない。基準が公表されればクリアする努力を続ける」と述べた。

島根原発1号機
 国産第1号の原発として1974年3月29日に運転を始めた。沸騰水型の軽水炉で出力46万キロワット。総工費は約393億円。原子炉機器の点検不備問題を受け、2010年3月31日に運転を停止。そのまま同年11月、定期検査に入った。

地元 廃炉願う声 「40年原則」焦点へ

 運転開始から29日で丸39年となった中国電力島根原子力発電所の1号機(松江市鹿島町)は、福島第1原発事故以来、地元で廃炉を願う声が高まっている。国は「40年で廃炉」を原則とする一方で、4月には40年超えの運転を審査する基準案を示す。原則通り廃炉となるかが、今後の最大の焦点となる。(樋口浩二)

 「中電は廃炉の決断を」。原発から2・5キロに住む同町の主婦青山瑞枝さん(67)は28日、思いを語った。福島の事故で原発の危険性を痛感したという青山さん。「廃炉にも時間がかかる。早く判断してほしい」と望む。

 1号機再稼働には松江市民の64・2%が反対―。島根大法文学部の上園昌武教授(環境経済論)が昨年11月にまとめた市内の有権者2千人への意識調査(1296人回答)の結果だ。市民の過半数が廃炉を望む現実が示された。

 「40年で廃炉」の原則には、再稼働への同意を判断する島根県と松江市の両首長も一定の理解を示す。「(年数で)線を引くのは一つの考え方」。溝口善兵衛知事は27日の記者会見で述べた。松浦正敬市長は28日、国が20年を上限に運転延長ができる例外を設けたことに対し「40年廃炉を厳格運用するために、早く詳細な説明をするべきだ」とした。

 地元経済界には「雇用など原発の経済効果は高い。国の基準をクリアすれば動かしてほしい」=まつえ北商工会の青山正夫筆頭理事(65)=との声もある。一方、市民団体「平和フォーラムしまね」(松江市)の杉谷肇代表(71)は「福島の教訓から生まれた40年で廃炉の原則を骨抜きにしてはならない」と訴えた。

(2013年3月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ